クラウドファンディング新たな資金調達による税務上の取り扱い
税理士 小林 康志
有望と思われるアイデアを事業化するための資金調達の方法の1つにクラウドファンディングがあります。現在国内市場規模は約2千億円と言われ、今後益々活用の幅が広がると予想されています。
ただ、クラウドファンディングを導入するに当たり注意が必要なのが、税務上の取り扱いです。
クラウドファンディングには出資者に対するリターンとして商品やサービスを提供する「購入型」やリターンが無い「寄付型」などがありますが、法人が最も利用している「購入型」では、収益計上のタイミングを間違えやすく注意が必要です。
資金の入金とリターンの提供は法律的には売買契約であり、会計処理の際には、入金時点では「前受金」、リターン提供時点では本業に伴う収入なら「売上高」、本業に関係の無いものであれば「雑収入」として処理することになります。リターン提供後に振替処理を失念して決算期をまたいでしまい、法人税の申告において、本来はリターン提供時に計上すべき「売上高」にかかる所得漏れを税務署から指摘されているケースが増えています。
また、消費税の免税事業者(課税売上高1千万円以下)や簡易課税事業者(課税売上高5千万円以下)がこの誤った処理を行った場合には、売上げ計上が前期に前倒しになり、その売上高が消費税の免税事業者や簡易課税事業者の売上基準額を超えてしまった場合には、消費税の納税額の計算方法が変わり、免除されていた多額の消費税を納付する事態に陥るリスクもあります。
これからも一層の拡大が予想されるクラウドファンディングですが、税務署から見れば、その実績はすべてネット上に残るものであることから、取引の実態の把握が容易になります。クラウドファンディングの導入はくれぐれも慎重を期したいところです。