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MBC合同会計ニュース
2021年12月号
所有者不明土地に関する政策の中で関連する法律の改正や新設がされています。登記の義務化、固定資産税と譲渡所得の特例について前回お話しましたが、税金とは直接関係のない民法に関する改正のうち隣地に関する話をしたいと思います。
隣地との関係に関する話として、「柿とタケノコの話」があります。半世紀以上も昔、学生の時に聞いた民法の講義に隣地との関係で次のようなたとえ話を聞いた事が記憶に残っています。
「タケノコが隣から地面をくぐって越境してきたら隣地の所有者に断りなく取って食べても良いが、柿の枝が自分の敷地に越境してきたら断りなく勝手に実を取ったり、枝を切ってはいけない。」という話です。
この柿の枝は、隣地の所有者に枝を切るよう申し入れをして相手に切ってもらう必要があります。
この時、隣の土地の所有者が応じない場合や行方不明の時にはどうしたらよいでしょうか。今の法律では、裁判を起こして、最後の手段として強制執行により枝を切ることになります。
柿の枝くらいなら現実的な対処で何とかなるでしょうが、大木が傾いてきたり、建物が崩れかかってくることも有るでしょう。このような時に裁判手続きを経由しなければならないというのは、いかにも現実的ではありません。
今回の改正では、隣地の所有者に枝を切るように申し入れをしたのに切ってくれない場合や、隣地の所有者の行方が不明な場合、隣家が崩れかかってきた時のように急いで対処しなければならないような時など特定の場合には複雑な裁判手続きを経ることなく対処できるようになります。
土地を他の人と共有している場合にも同じような事態が起きます。相続した土地を兄弟で共有している場合に、自分は売却処分したいのに他の共有者の所在が不明で処分できない。急いで土留め工事を行わないと土砂崩れになってしまうなどの場合には一定の手続きを取ることにより他の共有者の同意を得ることなく対処できるようにもなります。
来年1月1日から適用されますので、もうすぐです!ご注意ください。
この法律の本質を単純化すると次のようになります。
1.税法上、事業者には、紙の書類により証拠資料を保管する義務がありますが、電帳法により紙ではなく電子データによる証拠資料の保管も認められる。
(紙との選択になる)
2.しかし、電子データには一定の条件が課されていて、条件から外れていると、証拠資料にならない。
(電子データは改ざんがしやすいため、これを防ぐ目的のため)
3.もしも電子データで保存している会社に税務調査が入って、その電子データが条件から外れていることが分かった場合、会社としては証拠になると思っていたデータが認められません。
すると証拠資料が無いことになり、経費処理が認められなかったり、極端な場合には青色申告が取消しになることもあります。(取消しは滅多にはないでしょうが、取り消されると税法のいろいろな特典が受けられなくなり、大変不利です)
4.そうならないためには、紙の資料も並行して保管するということになります。
でも、それだったら、電子データの保存をしないで紙だけ保存の方がいいことになります。
5.しかし絶対に電子データで保存しなければならないものがあります。
それが「電子取引によるデータ」です。
結論として、まだしばらくは紙の保存を続け、電子取引のデータの保存にだけ1/1から注意しましょう、というのがポイントです!
例えばインターネットで事務用品や部品などを購入する、その支払をクレジットカードで行う、これが電子取引です。この場合、事務用品などを購入した証拠(普通は請求書や納品書)として、取引の電子データを自分のコンピュータなどに最長7年、保存しなければなりません。
さらにクレジットで支払ったという証拠(普通は取引明細や領収書)も電子データでの保存が必要となります。
これらは紙で打ち出して保管しても認められません!!必ず電子データでの保管が必要になるのです。
また、請求書をFAXやメールでコンピュータに受信する場合、これも電子取引になりますのでデータを保存しなければなりません。
ただし、別に紙の請求書が送られてきて、それが正本である場合にはその紙の保管で大丈夫です。
ちなみにデータ保存を市販ソフトで行う場合は、JIIMAの認証を受けたソフト活用がお勧めです。
結局税務署の本音は、民間の便利より、脱税の防止のようですね。
2021年11月号
前回は、所有者が不明な土地の発生防止のために土地の登記が義務化されることについて話をいたしましたが、所有者不明土地対策としては既に平成30年に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」という法律が制定され、これを基に既に実施されているものが有ります。
地方税に於いては、相続などにより土地などを取得した人は、固定資産税の賦課決定のために「現所有者申告書」を取得後3か月以内に提出しなさいというものです。
相続の手続きは、一般的に3か月の間では財産分けが決まっていないのが通常で、遺言書でも残されていれば取得者が申告することも可能でしょうが、財産分けが決定されていないと相続人全員が連名で提出することになります。相続税の申告は10か月以内ですので、この3か月以内というのはいかにも非現実的だと思われます。
一方、国税については、令和2年から令和4年までの土地の譲渡所得の計算に関する特例が有ります。
土地を取得したものの放置され、利用がされていないような低未利用土地を譲渡した場合に100万円の特別控除の適用を受ける事が出来るというもので、その主な要件は次のようなものです。
①所有期間が5年を超える事
②譲渡価額が500万円以下であること
③譲渡後にその土地が利用されること
④その土地が都市計画区域内にあること
これらの要件の具体的な内容は細部にわたり決められており、市区町村長の証明書の添付なども求められております。
この要件の内、④の「都市計画区域内にある土地」ということですが、前回の登記義務化の話の中で、登記がされず放置されるのは田舎にある土地や山など都市部以外の都市計画区域外の土地が多いという事でしたが、この譲渡の特例は、そのような、いわば辺境にある土地は対象外と言う事になります。
最近は「終活」が流行っているようですが、税務のことを意識すると次のようなことが必要となります。
1.生命保険の一覧と契約証書
自分の死亡保険の他に、あなたが保険料を払っている配偶者などの保険も書いておきましょう。
ちなみに保険金は「500万円×法定相続人の数」までは相続税が非課税で、受取額がこれを超えた場合に課税されます。
もしも加入している保険の金額がこれ以下の場合には、追加で保険に加入することをお勧めいたします。
その際は、一時払いの終身保険がお勧めです。
2.預金や証券会社の取引の一覧
あなたしか知らないへそくり預貯金がある場合に、相続で通帳が見つからなければ、そのお金は誰にも見つからずに、無駄になってしまいます。
もちろん、現金をどこかに隠している場合も同じです。
3.不動産の一覧表
子供や配偶者が、どこにどんな土地があって、どういう由来やトラブルがあるかを全く知らない場合が結構あります。
例えば、隣地と境界でもめているので、Aさんの祖父には気をつけろ、とか。
ここの山林は定期的に木を切らないと苦情がくるので、6月にBさんに依頼しろ、とかです。
一覧は固定資産税の課税明細書をコピーすればいいと思います。
権利証、建築確認通知書、測量図面などの所在もわかるようにしましょう。
4.不動産の購入金額のわかる書類
購入したときの売買契約書、領収書、不動産業者の仲介領収書など、建築契約書、領収書、登記費用の領収書などです。
相続後に、相続税の支払のために不動産を売却することは、よくあります。
その場合、相続税の取得費加算という特例はありますが、売却利益に対する譲渡所得税や住民税が課税されます。
この譲渡利益を計算するために、契約書などの書類が必要ですが、これが無いことが結構あります。
そうすると、買ったときの金額がわからないため、多額の税金がかかってしまうこともあります。
バブルの頃に買った土地など、書類があれば税金がかからないはずなので、保管が重要です!
これらの重要書類をできれば一括して箱などに入れ、「重要書類」と記入して保管することをお勧めします。
以上、相続の現場からでした。
2021年10月号
いよいよ登記の義務化が現実のものとなってきました。現在は、相続や売買などで土地を取得した場合にその所有者となった人が「この土地は私のものだ!」という登記をすることは、土地に対する自己の権利を主張するため「権利としての登記」とされており、登記をすることは義務とはされていません。
土地については、相続の相談に於いても田舎にある土地や、先代が投資目的で買った地方にある別荘地や山林などを相続したくないという話をたびたび聞くことが有ります。
しかしながら、相続税の計算に於いては、原則として無価値の土地は無いものとされており、どのような土地であれ相続税の課税対象とされています。
いろいろな理由は有るものの、相続などに於いて承継人が登記をせず、また、登記は有るものの所有者が住所の移転を登記せずに放置したりして、その所有者の生死や所在が知れず放置されている土地が全国的に存在し、これらを全部合わせると九州の面積を超えるという話があります。
これらの土地の多くは、都市部ではなく都市計画法による都市計画のない、都市計画区域外の山林や原野が多いものと思われていますが、都市部にもあちこちにあるようです。
町の中で荒れ放題の建物が立っており危険があるような場所。がけ地部分で所有者が分からず危険防止工事ができない。道路の拡幅工事など公共事業を行うのに所有者が不明で事業に支障が出る。また、その土地の所在する自治体に於いて固定資産税の課税が円滑にできないなど、所有者が不明なため様々な場面で困ることになります。
そこで、国としてもこれを放置できず、相続における相続人や登記をした後に住所の移転が有った所有者は、所有権の登記や所有者の住所の変更登記をすることを義務化するため、法律の改正をこの春の通常国会で成立させ、令和4年から適用することとされました。
今でも、登記をすることなく放置してある土地については登記所から対象者に電話で登記の勧奨がされていますが、これからは義務となるようです。
先月はインボイスの注意点だけを抜き出してお伝えしましたが、なかなかわかりにくいのでもう一度、こんどは消費税の仕組みからご説明しましょう。
まず、消費税は、最終消費者だけが負担するものです。
事業者(会社や個人事業主など)は消費者ではないので、消費税を負担していません。
え?うちの会社は毎年消費税をたくさん払っているけど?と思われたかもしれません。
しかし、それは預かった消費税を納税しているだけで、会社の負担は0円です。
つまり事業者は売上に消費税を上乗せしてもらいます。(預かり消費税)
そして、仕入や経費にも消費税を上乗せして支払います。(預けた消費税)
この預かり消費税から、預けた消費税を差引きした残りを、毎年払っているわけです。
ですから事業者は1円も余計に払っているわけでは無く、自己負担はゼロということです。
ところがインボイス制度が導入されると、仕入や経費に上乗せして支払った消費税のうち、インボイスが無い取引については、差引きしてはいけないことになってしまいます。
そうすると、事業者としては、納税額が増えてしまい、損をしてしまうわけです。
インボイスとは、適格請求書といい、売り手側が税率や消費税額を証明する書類なので、この証明書がない取引は、消費税が無いものと扱われてしまうのです。
しかしながら、消費税の免税業者(売上1000万以下の事業者)には、インボイスを発行する許可がおりないことになっています。
つまり、インボイス制度導入後は、免税業者との取引が問題になるのです。
工事業などの場合、個人の事業者など、零細業者が多く、免税業者がたくさんいます。
免税業者のままでは、事業に支障を来す恐れが強いです。
解決策として、課税事業者を選択する届けを出して、免税業者をやめる方法があります。
同時に簡易課税の届けも出せば、納税額は安く済むはずです。
こうすれば、売上1000万以下の事業者でも、インボイス発行の許可を受けることができます。
(この届出については、簡易的なやり方もあります)
すでにこれらの届出があるかを確認する文書を、取引業者に郵送する会社もあります。
免税業者の方、取引先に免税業者のある会社などは、ぜひこの検討をして、2023年10月1日のインボイススタート(猶予期間はあります)に間に合わせて下さい。
(あなたの会社が簡易課税の場合には、これらの検討は原則として不要ですが、いろいろと条件もありますので、MBCの担当者にご確認下さい)
2021年9月号
オリンピック、パラリンピックともここで終わって、ようやくこれから暑さも収まり冷静な日常がやってくるのかなというところです。
オリンピックが終わって日本も過去最大数のメダル獲得という話から、無粋な話ですが、「日本選手は金メダルを取ると幾ら貰えるのかな?」とフッと思いました。
ネットで当たってみると、上位3位までには、オリンピック選手は公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)から、金メダルで500万円、銀200万円、銅100万円が報奨金として贈呈され、パラリンピック選手は公益財団法人日本障がい者スポーツ協会(JPSA)から、金メダルで300万円、銀200万円、銅100万円の報奨金が贈呈されるとの事です。
人の財布が気になりますが、このJOCやJPSAからの報奨金については非課税とされています。
選手は、これ以外にJOCやJPSAに加盟している各競技種目などの加盟団体からも報奨金が贈呈されるようです。
この加盟団体からの報奨金についてはオリンピック、パラリンピックともに上位3位までについて、金メダルで500万円、銀200万円、銅100万円までが非課税となっており、この限度額を超えた分は一時所得として課税されます。
勝負の世界は厳しいものでして、精根尽きて試合を終え、メダルは取れなかったが4位に入賞して報奨金を貰ったとしても全額課税の対象になります。
華々しい競技の一方で、税金の問題で頭を悩ます選手もいることではないでしょうか。
オリンピックの興行の仕組みにつては分かりませんが、今回のオリンピックを開催するために国及び東京都など自治体の直接的な財政支出の合計が4兆円程だったとの新聞報道が有りました。
昨年、1年延期ではなく中止の政治判断を断行し、この予算を全てコロナ対策のために支出したとしたら、コロナ禍の現状と経済効果はどのような結果になっていたかを妄想するのは私だけでしょうか。
・小さい会社(消費税の免税業者)はインボイスを発行できないので、取引から除外される。(100%一般消費者としか取引がなければ大丈夫ですが・・・)
・免税業者は2023年10月1日までに、課税事業者を選択して、インボイスを発行できる許可を得て、取引から除外されないようにすべきです。
消費税の納税額の計算方式が2年後からインボイス方式に変わります。
インボイスとは消費税計算用の請求書のことをいいます。
全ての商取引について、今までの請求書からこのインボイス(正しくは適格請求書といいます)に変えないと、消費税の計算では、その仕入れや経費は無いものと取り扱われてしまいます。
具体的な計算例を見ましょう。(仕入・経費はすべてインボイスが無いと仮定します)
このケースの場合、現在は差引き利益110から消費税10を払った後に100の利益が残ります。
これが改正後は消費税納税額が100になるため、10しか残りません。
このため、インボイスを発行できない業者は、取引から除外される可能性が高いのです。(消費税10%を値引きして取引継続をするなら、課税業者になった方が有利です)
商取引には当然、事務所・工場・店舗などの家賃も含まれますので、大家さんも要注意です。
また自分の会社から家賃をもらっている社長もこの制度の対象になるということです。
実際には上記のようになるまでに猶予期間があり
2023年10月1日から2026年9月30日まではインボイスが無くても80%は認める。
2026年10月1日から2029年9月30日まではインボイスが無くても50%は認める。
2029年10月1日からは一切認めない となっています。
このインボイスを発行できる事業者(適格請求書発行事業者)の氏名、名称および登録番号等は国税庁のHPに公表され、インボイスにこれら必要事項が、記載されていることが条件です。
ですから取引の際、請求書等にこの番号などの記載があるかのチェックは必須になります。
今年10月から、「適格請求書発行事業者」の届出の受付が始まります。
免税業者に限らず、課税業者も税務署に届け出る必要がありますので、当事務所担当者とよく相談をして、タイミングを計って、届け出て下さい。
2021年8月号
今年の税制改正の中で気になるものが有りますので、お話したいと思います。
その一つが、いわゆるローン控除です。
ご存じの通りローンを組んで自己の居住する住宅を取得し、そこに住んだ時にはローンの年末残高に一定の率で計算した金額をその人の所得税額から控除するというものですが、その根拠になるのが租税特別措置法と言う法律によって決められている特例です。
この租税特別措置法の中で決められている特例の多くは「いつから」「いつまで」特例を適用するという期限付きの特別措置です。
ローン控除の制度は、その適用期限が来るたびに税法改正で期限が延長され、特例と言いながら制度の創設から何十年と続いており、ローンを組んで住宅を取得した時には当然に適用が有ると思われている制度です。
ところが、今年の税法改正に於いては、今まで期限が来るたびに改正により延長されてきたこの制度の延長をするとの記述が有りません。
つまり、このままですと今年の12月以降の住宅取得についてはローン控除の適用が無いことになります。
具体的には、新築の建築請負契約については9月30日、建売分譲住宅やマンションなどの購入については11月30日までに契約したものまでが適用対象になります。
贈与についても、親などから自己が居住する住宅を取得するために金銭の贈与を受ける場合の「住宅資金贈与の特例」についても対象金額や建物面積については改正されておりますが、令和3年12月末までと言う期限については、やはり、延長する旨の記述が有りません。
これらの特例は、経済政策と密接な関係が有り、このまま打切りとは考えられず、内容が不利になるかもしれませんが来年度の税法改正の中に適用期限の延長を含め特例制度が盛り込まれるのではないかと期待されています。
今の段階では、これらの特例制度は今年限りですと説明するほかありませんので、これらの特例適用を考えておられる人は早めに進めた方がよいでしょう。
もう緊急事態宣言はうんざり、という人が多いと思います。
そこで、飲み屋さんではなく、病院に助成金を払って、コロナ患者を引き受けて他の患者が減っても、経営が成り立つようにすればどうでしょう。
ベッド数が増えれば医療崩壊せず、私たちはほぼ普通に暮らせるのではないでしょうか?
政策も社会全体の損得をよく吟味してほしいと思います。
さて個人の生活では、損か得かはそれほど深く追求しませんが、会社の経営を考えるときは最重要といってもいい課題であり、会社の浮沈がかかる問題といえるかもしれません。
たとえば、税金は高い方がいいか、安い方がいいか?
それは安い方に決まってる・・・・本当ですか?
高い税金を払っている会社は、儲かっている会社です。
1000万の利益で300万の税金、手残りが700万円の会社と50万の利益で税金が10万、手残りが40万円の会社のどちらがいいでしょうか?
私ならば、税金が高くても700万円残った方がうれしいですね。
まあ、これは質問の仕方がいじわるなのですが、儲けるよりも節税優先という社長が多いもので。
ではデフレ(物価が上がらない)とインフレ(物価が上がる)はどちらがいいでしょうか。
消費者としては物価が上がらない方が得と思えます。
特に年金を貰っている方はデフレが得、しかし会社経営をしている場合、インフレが得ですね。
今の日本はデフレで、景気が悪く、値上げできない社会です。
経営者にとって、値上げできる社会はとても魅力的な社会じゃないですか!(極端なインフレはもちろんNOですが)
では社員の給料は高い方がいいか、安い方がいいか。
損益計算書で、給料が増えると利益が減る、というのは正しいです。つまり損。
しかし会社経営では、給料を上げてそれ以上売上を上げる、ということは考えるべきことです。
また、給料の高い社員=優秀な社員を雇うことで利益が増えることもあります。
逆に会社が儲かっているのに給料を下げてしまったら、辞めてしまうかもしれません。大損です。
難しい所ですが、世間相場より少し高めの給料を払って、優秀な人材を確保する、が正解でしょう。
マクロで考えると、給料が上がることが景気を良くし、インフレになるという図式ですからその点からも給料は高い方がいい、といえます。
国の方針も、安倍政権の時代からずっと、給料を上げると税金が安くなる政策をとっています。
また、補助金も、給料を上げたり、新しく雇ったり、非正規を正社員にするともらえるものが増えています。
この傾向は、ますます強くなっており、毎年の最低賃金の引き上げなども、その現れです。
一刻も早くコロナを克服して、給料が上げられる世の中にしたいものです。
2021年7月号
遺言書の保管について何度かお話をしましたが、今回は、遺言書保管制度を使い法務局へ保管申請をする具体的な手順についてお話ししたいと思います。
1 遺言書の本文を書く
この用紙のサンプルも法務局のホームページに載っていますので、これを使用するのが良いでしょう。この用紙にはみ出さないように書くことにより面倒な余白は気にせずに作成する事が出来ます。
この遺言書の本文だけはすべて自分で書かなければいけません。また、名前、日付、印は絶対的な要件ですので、過去の記事で再度確認をお願いします。
2 遺言書の保管申請書の作成
法務局に保管申請するための申請書ですが、これもホームページから印刷できます。内容はマス目の様式が5ページと手数料納付用紙1枚です。これらの内、自分に必要な部分の用紙を使うことになります。
この申請書ですが、該当ページをダウンロードして必要事項を入力して印刷すればそのまま使えるようになっていますので、コンピュータができる人に作成してもらうと良いかと思います。
3 出頭
こうして、準備が出来たら予約した日時に次のものを持って、本人(付き添いの同伴も可)が法務局に出向きます。
①作成した遺言書(封筒などには入れない)
②遺言の保管申請書等
③本籍、戸籍の筆頭者の記載のある住民票(マイナンバーの記載の無いもので取得後3か月以内のもの)
④保管手数料3,900円
⑤遺言書に使用した印鑑(念のため)
⑥身分証明書、この身分証明書として使えるものは「公に作成された写真入りの証明書」が必要です。
一般的には運転免許証や有効期限内のパスポートなどですが、それ以外で考えられるのはマイナンバーカードと言う事になります。健康保険証などでは受け付けてもらえませんので注意が必要です。
保管制度のホームページ
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
前回に続き、生産性を上げるには、どうすればいいかについて、考えてみます。
前回の結論として、効果を大きくするためには、損益計算書の上のものから手をつける、でした。
その順番で、具体的な方法を考えてみます。
売上を上げる方法
・値上げができれば(お客様に受け入れられれば)いいのですが、簡単ではないでしょう
・採算部門の拡大(人件費のアップにつながりますが、不採算部門から人を移動できないか考えます)
・商品、サービスの競争力アップ(研究開発費の増額につながります)
・従業員の能力アップ(教育・研修費のアップにつながります)
・販売数量のアップ(既存客への営業・新規得意先の開拓)
・新商品、新分野への進出(事前の調査、人員配置、資金投入が必要)
原価を下げる方法(粗利を上げる方法)
・定期的に仕入れ先の単価を見直す取引量の多い仕入れ先は、時の経過とともに単価の引き下げの余地が出る場合がありますトヨタは3年おきに単価の見直しを要求するようですね最近は価格の比較専門のサイトもあります
・新しく効果的なテクノロジーの採用(リース料など固定費アップの可能性あり)
・従業員の能力アップ(教育・研修費のアップにつながります)
・情報共有による無駄の削減・業務見直しで無駄な工程、ロスの削減、ボトルネックの解消
人件費を下げる方法
・不採算部門の縮小(その人間を採算部門に異動できれば一石二鳥です)
・人員削減(売上減少の恐れがあります)
・残業減らす(働き方の見直し、無駄な行程の見直し、人手不足の解消など)
・給料下げる(通常はできません)
経費を下げる方法
・電気・ガス・電話などの契約見直し
・事務所、工場などをコンパクトにできないか検討
・無駄な経費の見直し、単価の見直しなど
コストを下げようとして規模縮小にならないよう注意する必要があります。
売上を上げようとすると、そのための投資が必要になりますし、原価を下げるのも同様です。
やはり商売の基本は「損して得取れ」のようですね。
2021年6月号
前回は、生前贈与をして相続対策を行っても相続税の計算時には相続開始前3年以内の贈与は持ち戻し計算の対象とされると言う話をしましたが、この対象から全部又は一部が外される贈与として次のようなものが挙げられます
1 贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の配偶者に、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭を贈与し受贈配偶者が居住用不動産を取得して居住した場合には2千万円まで贈与税が課税されない。
2 住宅取得資金贈与の非課税特例
父母や祖父母などの直系尊属からの贈与により自己の一定の居住用不動産の取得のための金銭の贈与受け、取得した住宅に居住した時は、取得者の年間所得が一定金額以下の場合に建物の性能によって最大1500万円が非課税とされる
3 教育資金の非課税特例
父母や祖父母などの直系尊属から年間所得1,000万円以下の子や孫が教育資金の一括贈与として金銭などの贈与を受けた場合には1500万円までについて一定の条件のもとに非課税とされる。但し、受贈者が30歳になった時の未使用残額は贈与税の課税を受けます。
また、贈与者が亡くなった時は未使用残額が原則として相続税の計算に取り込まれます。
4 結婚・子育て資金の非課税特例
父母や祖父母などの直系尊属から、年間所得が1,000万円以下の20歳以上50歳未満の子や孫が結婚・子育て資金に充てるため金銭などの贈与を受けた場合には最大で1000万円までが非課税とされる。但し、贈与者が亡くなった時は未使用残額が相続税の計算に取り込まれます。
更に、上記3と4の贈与に於いて相続税の計算に取り込まれる場合に、受贈者が孫である場合には原則とし相続税が2割加算されます。
これらの特例贈与については、申告が必要であり適用条件も複雑ですので事前にMBC の担当者までご相談ください。
営業利益率5%の、一応利益が出ている会社ですが、もっと生産性を上げて、利益を増やしたい。
そう思い、経費を下げる、人件費を下げる、原価を下げる、人件費を上げて売上を増やす、の4つの対策を考え、それぞれ10%づつ変えるとした場合、効果の大きい対策はどれか、検討しました。
同じ10%でも、変わる金額は異なり、経費の10%は1500、人件費は2000、原価は6000、売上は10000変わります。当然効果が大きいのは売上を増やすことです。
しかし、現実には、売上を増やすには、まず人件費を増やしてよけいに売らなければなりませんし、それに比例して原価が上がります。(上の表の一番右を参照して下さい)
ですから、一番直接的に効果が大きいのは、仕入れ値を下げて原価を下げることとなります。
原価を下げる=粗利を上げるですから、労働分配率も下がります。
トヨタが毎年仕入れ値の見直しをするのは、このためです。
損益計算書は上の方(売上や原価など)の金額が大きく、下の方は小さいのが普通です。
ですから同じ労力をかけるなら、上の方から、つまり売上や原価から手をつけるべきです。
その次が人件費ですが、これは毎年定期昇給することを考えると、増えることが前提となります。
ですから、減らすことは社員のモチベーションの上からも、至難の業となります。
逆に増やすことで、それ以上に売上(粗利)を増やすことを計るのが、経営手法としては健全です。
また、社員の定着性、募集、帰属意識、給与相場との比較など、人件費は上げることで経営を有利にする側面も数多くあります。
*上記の表の率の説明(粗利と固定費と人件費の組み合わせだけで計算します)
活動生産性=(粗利÷固定費×100)で、大きいほど優良です。優良の目安120以上
損益分岐点比率=(固定費÷粗利×100)で小さいほど優良。労働分配率=(人件費÷粗利×100)で、大きすぎるとダメ、小さすぎるとブラック。理想45
労働生産性=(粗利÷人件費×100)で、大きいほど優良。
2021年5月号
直接の税法改正ではありませんが、昨年末に公表された今年度の税制改正大綱の中で気になる点がありますのでご紹介したいと思います。
それは大綱の中で「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」と言う見出し部分です。
これについては、昨年(令和2年度)の税制改正大綱にも「資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築と格差固定化の防止」と言う見出しで同じ内容の検討がされています。
その内容は、高齢化社会に伴い、高齢世代に資産が偏在し相続による資産の移転も「老々相続」となり若年世代に資産の移転が進まず、格差の固定化にもつながっていること、また、贈与税は、相続税の累進税率の回避を意図し「相続対策」と称して生前に推定相続人に連年贈与をすることなどを通じて結果として格差の固定化に繋がっていると言う事です。
これを、外国における相続税と贈与税の課税関係を掲げて資産の移転のタイミングにかかわらず税負担が一定となり意図的な租税の回避も防止するような措置が必要であるとされています。
具体的には、相続が開始した時に我が国の現行法では相続開始以前3年以内の贈与については相続財産に持ち戻して相続税を計算しますが、この期間をアメリカのように無制限とするか、ドイツ10年、フランス15年と言うように大幅に期間を伸長することにより格差の固定化の防止と資産移転の時期の選択により税負担の影響が少なくなるようにすべきだと言っています。
要は、税制改正大綱の中で二年連続して同じことが議論されている事から近い将来に相続税法の改正を行い、現行の相続開始以前3年以内の持ち戻し加算の期間を長期間行うようにして、生前における贈与の有無にかかわらず相続税の税額は変わらないようにするのではないかと言う事です。
もしも、そうなるとすれば、著名な税理士が「秘かに騒いでいる」ように「相続税対策」として贈与を使って資産の移転を行おうと考えている人は早い時期に計画を進めた方がよいかもしれません。
いつまで我慢をすればいいのか? 我慢の先に光はあるのか?
たぶんほとんどの人がそう思っているでしょう。
企業の売上は業種によって明暗を分けますが、今まであまり影響のなかった業種までも、暗雲が垂れこめてきたと、お客様の数字を拝見していると実感します。
それはそうです。
みんなが出歩かず、外食を控え、大げさに言えば1億総引きこもりになっているわけですから、経済が縮小するのは、残念ながら当たり前です。
そしてこの状況は、ワクチンが行き渡るまでは続きそうです。
つまり短くてもあと半年、現実的には一年、このぬかるみの道が続くということです。
このぬかるみの中で利益を上げているのはどんな会社でしょうか?
たとえば、ソニーはゲームや音楽が牽引し、最高益とのことです。
スーパーのライフは、総菜、とくに自宅調理用の自社ブランド、日用品などが好調です。
富士通はIT関連事業が、村田製作所はPCやスマホ向けのコンデンサーが好調です。
ヤマト(運輸)はネットショップやインターネット通販事業者向けの配送が絶好調。
日本マクドナルドはメニューや価格の見直し、デリバリーやモバイルオーダーを工夫して外食産業にもかかわらず、最高の利益とのことです。
これをみると、もともとの事業内容を現状にあわせてアレンジしている、提供方法や販売先を変えている会社が、過去最高益を出しているようです。
全く違う分野に乗り出して成功したという事例は、あまり見受けられないようです。
やはり、コロナの影響が1~2年と予想すると、その期間で回収しきれないほど大きな投資は、避けるという判断なのでしょう。
売上が蒸発してしまったインバウンド、航空、ホテルなどは、精一杯の努力をしながらも、赤字は免れないため、巨額の融資を受けて、この期間を耐え抜くしかありません。
融資も、通常融資ではなく、資本性融資にシフトしているようです。
資本性融資は、返済開始までの期間が長い、赤字の時は利息が安く、黒字になると高くなる(配当のイメージです)、決算書で借り入れではなく、資本に計上できるなどの特徴があります。
つまり赤字の会社が黒字になるまで耐える場合に、ちょうど良いわけです。
資金手当が付けば倒産はしないものの、毎月赤字が続き、預金が減っていくのは、経営者としては耐えがたいつらさです。
さらに仕事がない社員のモチベーションを維持するにはどうしたらいいかなど、難問ばかりです。
きつく、つらい道のりですが、つらいのはほとんどの会社が一緒です。
耐えて、乗り切りましょう!
このぬかるみの先には、光が待っていることを信じましょう。
2021年4月号
4月からの新年度の開始前に、それまで続いていた新型コロナ感染対策のための緊急事態宣言が3月22日に解除されました。
この解除については、経済効果に期待し賛成する人、また、感染拡大を心配して反対する人の両方の意見が報道されています。
このように、一つの事柄について判断をする時に必ずしも皆が同じ意見を表明するとは限りません。むしろ、反対意見があるのが日常のことではないでしょうか。
何故そうなるのでしょうか?それは、人それぞれ生まれや育った環境、それまでに関わってきた人の影響や利害関係が異なり、これらが相互に関係しあいそれぞれの人の価値観が異なる上に、人が判断する時に置かれた状況に影響を受ける故にだと考えられます。
緊急事態宣言の解除についても、解除することにより商売を再開し経済活動を復活させようと言う人、4か月後に迫った東京オリンピックを成功させようと考える人は歓迎するでしょうし、感染拡大を恐れ拡大防止に重点を置く人たちは歓迎しないことになるのは当然のことだと思います。
つまり、社会の現象・活動は見る方向により判断が変わり、多面性を持つこととなります。この多面性について、税金の世界においてはどうでしょうか。
一つの問題提起について、税金の世界では答えは一つです。つまり、課税されるか否かと言う事に尽きてしまいす。
「見解の相違」と言う表現が有りますが、どのような見解で納税者側が判断しようと、結果として、行政側の課税要件が満たされているか否かと言う税法判断により一律に課税の可否が判断され、そこに納税者側の個別的特殊事情は判断に加味されないというのが現実です。
今年度の予算も今の国会で成立し、予算と密接に関係する税法の改正も昨年末に発表された税制改正大綱の通り成立する予定です。
今年度の改正内容は、直接大きな影響があるような改正は見当たりませんが、参考となるものについては順次お知らせしていきたいと思います。
ご存じの方も多いかもしれませんが、事業再構築補助金という制度が始まります。
なんと最大6000万円、予算規模1兆1485億円の超ビッグな補助金です。
条件は以下のようになります。
①申請前の6ヶ月のうち、どこか3ヶ月の売上合計がコロナ以前の同売上より10%以上減少
②事業再構築計画を経営革新等支援機関(MBC合同会計も認定されています)と取り組む
補助額=100万円~6000万円
補助率2/3(今年1~3月売上30%以上減少の企業で一定の場合は1500万まで3/4)
補助対象経費=建物建築、改修、設備費、外注費、研修費、広告費、その他
これを見ると、「お、コロナ救済で大盤振る舞いか?」と思いますが、そうではありません。
1番のポイントは、本気の事業再構築計画を、市場調査をし、綿密に立てることにあります。
けして、補助金狙いのうわべだけの計画では、採用されない制度になっています。
それは「事業再構築」の定義に現れていますので、ざっとご説明します
①新たな(過去にテストもしたことがない)製品、商品、サービスを扱うこと
新たな製品が既存の製品の売上を減少させるのではなく、相乗効果があること
(アイスクリーム屋さんが新たにかき氷を扱っても、既存売上が減少するのでダメ)
単に製造量を増やすとか、すでに扱っている商品の組み合わせなどはダメ
②主要な設備を変更する、つまり設備投資すること(ここに補助金がつきます)
単に、より性能の高い同種の機械設備を導入するのではダメ
③今やっている業種での、競合他社の多くがすでに製造等していないこと
例えばスナックが昼カラオケをやるのは、すでに同業が多くやっているのでダメ
あまり、同業他社がやっていない事業転換であることが必要です
④3~5年後にその新たな製品等の売上が総売上の最低10%以上となること
この割合が高い計画ほど評価が高くなりますが、実現可能性が問われます
標準産業分類の業種が変わるような場合は50%以上が要求されます
例えば日本料理店が焼き肉店をやろうと計画した場合
①は過去に焼き肉店をやったことがなければOKです
客層も違うため、既存の売上を減少させないことを説明することでOKです
②は新たにロースター等や改装が必要であり、今までない設備のため、OKです
③は日本料理店の競合他社の多くが焼き肉店をやっていないことを説明できればOKです
④は日本料理店と焼き肉店は産業分類の細分類が異なるため、3~5年後に焼肉売上 が50%以上になる計画が必要です
このハードルの高い補助金を申請し、採用される会社は、間違いなく御社の強敵です!難しいですが、御社でもチャレンジしてみませんか?
2021年3月号
確定申告もいよいよ追い込みの時期になりました。申告期限も本来であれば3月15日までですが、コロナの感染拡大防止と言う事で昨年と同じように期限が延長されて4月15日までとされています。
コロナの感染拡大防止の方策として政府は在宅勤務などを推奨しており、確定申告もネット申告(e-TAX)を使う事を推奨しています。
MBCが提出する申告書も、ほとんどが電子申告によって行っていますが、昨年の所得税の確定申告の総件数2,200万件の内630万件ほどが電子申告で行われたとの事です。
この630万件の内、国税庁のHP にある確定申告書作成コーナーを利用して自分で申告した人は195万人いたそうです。
令和元年分の確定申告からスマホでも電子申告ができるようになり、これらの電子申告システムは税務署の事務の省力化と徴税コストの削減に大きな貢献をしています。
納税者側からすれば税務署などに出向かず申告でき、コロナ禍から少しでも遠ざかることができるのですが、コンピュータやスマホに不慣れな人は電子申告を使いたくとも使えません。
この電子申告をするために必要な物の一つとしてマイナンバーカードを準備しなければなりませんが、政府の発表によれば今年の1月17日現在で普及率が24.6%との事です。
令和4年度末までには全国民にマイナンバーカードを持たせようと、政府が躍起になってQRコード付きの交付申請書の個別発送などを行い、この春からは健康保険証として使ったり、将来的には運転免許証も兼ねさせると言う事ですが力による普及ではなく、普及を阻害している要因を考え、もっと国民に受け入れられる施策を行い、より不安を払拭することによりマイナンバーカードが役に立つものだと理解されれば自ずと普及拡大するものと思います。
MBCの職員一同コロナ禍にも負けず本来の申告期限である3月15日を目指して夜遅くまで確定申告事務に情熱を注いでおります。
1963~1999年に活躍した経営コンサルタント。日本のドラッカーと呼ばれる。
少し前に活躍した方ですが、時代を超えて心にしみる(耳に痛い)教えを抜粋してみました。
前年の200%の売上計画を立てると、たいがいの人が「それは無理」といいます。
実現可能か、不可能かは何を根拠にしているのか。
それは過去の実績であるが、それほど過去の実績はりっぱであり、正しいのか。
過去の実績は、「不手際と失敗の積み重ね」であり、「いままでにわかったほんのわずかな事がら」にしかすぎないのである高い水準の計画をたてて、その通り実現させることこそ、真の誇りなのである。
トップの夢や未知への取り組み、期限を切ってこれの達成に取り組むのが計画だ。
新幹線、アポロの月への有人飛行などが実現したのはまさしく未知への取組みだ。
(現代ではアップルのスマホ、アマゾンの販売方式などもこれにあたるでしょう)
経営者は不可能なものを可能に変えるために必要なのだ。
仕事は失敗や遅れを発見して手を打つためのものではなく、遅れそうなものを事前に発見して、未然に手を打つためのものである。
治療をするのではなく、予防をするのが本当である。
権限を部下に委譲するのは部下に仕事をさせるためではなく、上司が前に進むための時間を得るためである。
経営担当者の原則
1.まず、自分自身を管理せよ
2.上を向け
経営者なら顧客を向く、部長なら社長を向く。次に横を見る。
部下のためになることは、上を向かないとでてこない。
3.速やかに決断をくだせ
タイミングをはずした優秀な決断は、タイミングの良い劣った決断よりなお劣る。
4.目標を設定せよ
5.結果に注目せよ
給料は過程ではなく結果に払うもの。努力に払うものでもない。
6.時間を有効に利用せよ
時間だけは作り出せない。工夫、権限委譲などでひねり出すしかない。
7.優先順位を決定せよ
経営者は1時間ごとの予定など組んではいけない。
経営者の仕事は常に予期しないことに対応すること。
これに備えるには空き時間を取らなければならないが、現実には難しい。
だから重要なのは優先順位で、限られた時間を重要な仕事に使う。
8.人の長所を利用せよ
長所は伸ばせるが、短所を矯正するのは至難の業。
人の長所をみてそこを利用する方が圧倒的に効率的。
2021年2月号
いよいよ今年も2月となり確定申告のシーズンとなりました。コロナ禍の中昨年は期限が4月16日まで延長されましたが、現状を見るに本当に確定申告など期限内にできるのかなと思います。
通常国会も開催され予算の審議も始まりました。今年の予算案の規模はマスコミによれば110兆円弱と過去最高となるとの事です。
この予算の財源については、本来、全額税収によることが理想ですがコロナ禍での景気後退により税収分は全体の50%強で不足分は国債の発行により40%以上を賄うという財政健全化とはかけ離れたものになりそうです。
このコロナ禍のなか、財政は国債に頼らざるを得ないのはやむを得ないのでしょうが、少子化・景気の後退・気候の温暖化など不安な要素を含んだ社会で過去からの分を含め莫大な国債の償還を子や孫の時代に引き継がせるというのが気がかかりです。
このような財政状況の中、昨年の確定申告はどの程度予算に関係しているのでしょうか、内容を簡単に見てみましょう。
国税庁発表の令和2年6月の「報道発表資料」によれば、確定申告の件数はここ5年ほど2,200万人ほどで大きな増減はありません。
昨年の申告で、納税額のある人の申告が630万人で税額が3兆2千億円、還付申告の人が1,300万人、納税額がない人が270万人との事です。
また、個人事業者の消費税については申告件数が110万件で納税額が6千億円となっています。
消費税と所得税を合わせても確定申告における個人の税額は3兆8千億円程度と予算に占める割合は4%にも及ばないようです。
この割合を見ると、確定申告で日本中大騒ぎするわりには財政収入に与える影響がいささか少ないように思われます。
しかしながら、個人個人にとっては、ふるさと納税や医療費の還付を受けたい人、事情があって不動産をやむなく売却した人など個人の事情が反映された膨大な数の確定申告が今年も提出されることでしょう
コロナ禍が猛威を振るっていますが、税制の特例で、次のようなものがありますので、参考にしてください。
従業員に支給した次の見舞金は非課税です
①緊急事態宣言下で、「事業の継続を求められる業種」の従業員のうち
②多数の者との接触を余儀なくされる業務に従事する者(看護師、レジなど)で
③相当程度心身に負担がかかっていると認められる者に対する支給で
④その見舞金が心身に加えられた損害につき支払を受けるもので
⑤金額が社会通念上相当である(例示は5万円となっている)
⑥役務の対価でないこと「事業の継続を求められる業種」とは「新型コロナウイルス感染症対策の基本対処方針」に詳しく業種が載っていますが、介護施設や病院、薬局、食品小売り、食堂、レストラン、宅配、生活必需品小売り、理美容、ゴミ処理、タクシー、トラック、育児などが入っています。
医療費控除について
・マスクやビタミン剤購入費は医療費控除の対象になりません。
・任意で受けたPCR検査の費用も医療費控除の対象になりません。
(検査により感染が判明し、治療を受けた場合は対象になります)
固定資産税や償却資産税の軽減制度
2020年2月から10月のうち任意の連続する3ヶ月の収入が前年より
30~50%減少の場合 2分の1
50%以上減少の場合 全額
(申請が必要になります)
青色申告特別控除
通常55万円に減額されますが、e-TAXの場合は65万円のままです。
雇用調整助成金の収入計上時期
対象となる手当を社員に払ったとき(入金した時ではありません)
非常用食料品の備蓄費用(コロナとは関係ありませんが)
長期保存するものですが、購入、備蓄時点の費用になります。
在庫(貯蔵品)にならないかと感じますが、こういったものは消費することが目的ではなく、備蓄することが目的なので、備蓄した時点で費用となります。
消火器の中身なども同じ扱いになります。
ただし、そもそも、その備蓄が事業に必要かの判断は必要です。
地震などで数日間、従業員が会社に宿泊等する場合の備蓄などは認められるでしょう。
しかし、それを社内の通常の飲食で消費していたりする場合、給与課税される可能性があります。
2021年1月号
新年あけましておめでとうございます。コロナ禍にもめげず今年は牛のごとくゆっくりと力強く進んで行きたいと思います。
年明け早々の話としては好ましくないかもしれませんが、相続において重要ですので配偶者居住権についてもう少し話をさせて頂きたいと思います。
配偶者がこの権利を取得するための条件は、①被相続人の所有していた家に、②相続開始の時において、③無償で、④配偶者自身が居住していることが必要とされています。この条件については、通常の家族関係であれば何ら問題は無いものと考えられます。
この建物(家)ですが、被相続人が単独で所有していれば問題はありませんが共有の場合には注意が必要です。被相続人と配偶者で共有であれば被相続人の持分について居住権を設定できますが、被相続人と子供で共有している場合には子供の権利を侵害することはできませんので被相続人の持分に対しても配偶者居住権を設定することはできません。
取得するには、どのような手続きが必要かと言うと、通常は相続開始後の遺産分割協議において居住権を配偶者が取得するという合意をします。財産分けの話し合いがつかず合意できないときは家庭裁判所の審判が必要になります。
このような事態を避けるためにも以前お話した遺言書の作成が重要となります。
遺言書作成で注意しなければならないのは、「妻〇〇に配偶者居住権を遺贈する。」と「相続」ではなく「遺贈」と表現します。
配偶者居住権を分割協議や遺言で、何が何でも設定することが良いわけではありません。配偶者も相続が済んだら転居や施設への入所を考えるかもしれませんし、家を相続した子供などに事情があって、どうしても家を売らなければならない事態が生じるかもしれません。
このような場合に、遺言であれば相続が開始してから配偶者が「遺贈」の部分を放棄し配偶者居住権を取得しないこともできます。
また、取得した配偶者居住権を第三者に対抗するためには、その建物に配偶者居住権の設定登記が必要となります。