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MBC合同会計ニュース
2017.12月号
前回までのお話で、自分で作成する「自筆証書遺言」についての概要を説明しましたので、遺言書の話の締めくくりとして公正証書で作る遺言についてお話をします。
その名の通り公証人役場に出向いて公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がこの内容を公正証書にしてくれるものです。
正本と謄本として2部作成してくれて、原本は公証人役場で保管してくれます。
受け取った2部の遺言書を保管するわけですが、仮に紛失やよからぬ輩に破かれたりしても公証人役場で再発行を受けることができます。
自分で作った遺言書は裁判所の検認手続きが必要ですが、公正証書で作るとこの煩わしい手続きが不要であり、直ちに相続登記や預金の名義変更・解約もできるようになります。
具体的な作成準備としては、自分の生まれた時から現在までの戸籍謄本、相続人になる子供たちの戸籍謄本を準備し、自分で作る遺言書もそうですが相続の具体的手続きをしてくれる「遺言の執行者」を決めて、公証人役場に予約をしてから遺言作成の証人二人と一緒に赴くのがよいでしょう。遺言作成の証人には、利害関係のある人離れませんので注意が必要です
この時、大事なことは自分で作る遺言書と同じですが、どの財産を誰に引き継がせるのかと言う内容を具体的に決めて、できればきちんと文書に作成して持ち込むのが良いと思います。
遺言の内容は相続税が関係する事なので、できれば作った案を税理士にも見てもらい意見を聞いた上で作成した方がよろしいと思います。
公正証書遺言の作成手数料は、遺言をする人の総財産金額と相続人の人数により計算されて、遺言書作成の当日に公証人に支払います。
これまでの話としまして、自分で作る遺言書も公正証書遺言もいざ作るとなると、なかなか前に進まない事と思いますし、遺言書も万能ではありません。
しかしながら、自分の思いを実行させるために必要最小限の事ですので作成して置くことをお勧めします。
私どもの、すべての法人のお客様。
規模は全く違いますが、そのいくつかの数字について、ここ一年間の統計をとってみました。
ご参考にご覧ください。
まずは結果をみますと、
平均売上高2.9億円、平均売上総利益8千万円(売上総利益率27%)、赤字法人比率29.6%でした。
社長報酬年額平均879万円、税引き前利益平均764万円、労働分配率55%となりました。
全体として高めの数字かな、と思います。
これは飛びぬけて数字が高い会社が何社かあり、そこに引っ張られるために平均も高めになるのだと思います。
(売上について)
上位10位の会社はやはり売り上げも多く、7社が10億円を超えています。
その業種は飲食・製造(精密機器)不動産・建設・卸売など、バラバラで、特定の業種がいいということはありません。
中小企業にとって、売上10億円はかなり高いハードルで、創業以後、順調に売り上げを伸ばした会社もここで伸び率が悪化して、足踏み状態になるケースが多く見られます。
おそらく、これ以上伸びるためには、個人の力よりも組織の力で稼ぐ会社でないと難しいためだと思います。
これが中小企業の弱みで、このハードルを越えると、地域の中堅企業への道が見えてくるようです。
(売上総利益について)
売上総利益は金額でなく、売上に対する比率で見ると、他社との比較もでき、役に立ちます。
上位の会社はみな、この比率が高く、売上が10億以下なのに10位に入った会社は、極端にこの比率が高い会社ばかりです。
逆に売上が10億以上なのに10位以下の会社は、売上総利益率が低すぎる会社でした。
売上総利益率が高いことは、中小企業が大きくなることの絶対条件ともいえます。
ただ例外もあり、それは卸売業のように総利益率が低くとも、少人数で多額の売上を上げられる業種です。
こういう会社は固定費が低いため、利益が出るのですが、売上が少し下がるだけで赤字になってしまい、「安全性」という観点からは、あまりいい評価はできません。
ましてや、売上が思うように伸びない会社は、利益率を高くしないと、経営が成り立ちません。
(来月に続きます)
2017.11月号
前回の話までで自筆の遺言書が出来ました。これをどうするかと言う事を今回はお話ししたいと思います。
出来上がった遺言書をそのまま机の上に置いておくこともできないので封筒に入れます。封筒の表に「遺言書」とでも書いておきましょう。何も書かないと飲み屋の請求書かと思われ捨てられてしまうかもしれません。
封筒に入れる時に封をするかどうかですが、内容を家族などに知られたくなければ封をして、遺言書に押したと同じ印鑑で封印をします。
自分で書いた遺言書で厄介なのは、その保管方法と裁判所の検認が必要だと言う事です。
保管ですが、そのあたりの引き出しにでも入れて置くと何かの時に表ざたになります。また、確実にしまいこんでしまうと、いざと言う時に発見されないかもしれません。ここはやはり封筒に入れて封をして封印を施した上で信頼できる人に保管してもらうか保管場所を家族などに伝えておくことだと思います。
亡くなると裁判所(家庭裁判所)の検認手続きが必要ですので、封筒に開封してはいけない事と、裁判所の手続きが必要であることを書いておくとよいと思います。
遺言書の保管者や発見した人は亡くなった人の出生からの戸籍と相続人全員の戸籍をそろえて検認の申し立てを裁判所に行います。裁判所は期日を決めて相続人全員に知らせ、期日に相続人らが裁判所に集まり、はじめて遺言書が裁判所で開封されます。
申し立ての費用は800円の収入印紙と相続人に通知するための郵便切手代がかかります。
自筆の遺言書で厄介な保管と検認手続きですが法律の改正が検討されており、将来的には登記所などの公的機関で遺言書の保管ができるようになり、裁判所の検認手続きも省略されるようになるかもしれません。
ここまでの話で、自筆の遺言書について必要最低限のことを述べましたので参考にして頂きたいと思います。
すごい土地バブルを相模原市内で見ました。
隣り合った二つの土地(実際には間に普通の住宅が1件あります)が、一つは今年の初めに坪55万円で取り引きされ、もう一つは今年の7月になんと、坪74万円で取り引きされたのです。
約半年で19万円、約35%の上昇です。
この地域、国税庁の路線価金額は坪40万円くらいで、これは公示価格の8割といわれていますから、逆算すると坪50万円になり、年初の55万円の取引は順当な値段といえます。
ところが7月の坪74万円は路線価の148%!
これはバブルだった1990年頃の路線価と売買価格の比率と完全に一致します。
ただ、このバブルはアパートやマンションなどの賃貸用物件にのみ起こっているようです。(だから30坪の自宅の敷地を売ってもあまり高くは売れないと思います)
冒頭の二つの物件も、面積が広く、買ったのはどちらも東京のアパート業者でした。
これからアパートを建てて、投資物件として販売するのだと思われます。
東京の業者から見れば相模原の土地は安く、投資総額も手ごろなのでしょう。
10月26日の日経新聞朝刊に「貸出金利の低下などにより地銀の利益は減少しているが、貸出残高は堅調で、その原因は個人向けアパートなどの不動産融資が増加しているから。」という記事がありました。
超低金利で苦しむ地銀が、手っ取り早い貸出先を確保するために、不動産投資にどんどんお金を貸しているという構図がよく見えます。
ただ、同じ記事に「金融庁の調査でアパートの空室率は築5年だと2.6%だが、10年で7.1%、20年で11.6%になる」とありますので、アパート経営もけして安泰ではありません。
さらに10月29日には「日本の不動産市場で外資系法人の投資額が、日本の上場不動産投資信託(REIT)を初めて上回った。これは円安、金利安で低収入でも利回りをとれるから」という記事もありました。
こういったことが、ますます投資物件バブルに拍車をかけているのでしょう。
ただし、どう考えてもこのバブル、オリンピックの前にはじけると思います。
なぜかというと、みんながそう言っているからです。
2019年頃になると「そろそろやばいから様子見をしよう」とみんな思い、取り引きが極端に少なくなり、値下げスパイラルが始まると思います。
ですから、今、投資物件を購入すると、高値でつかみ、数年後に下落する可能性が高いです。
今は、売るのには最適、そのお金を取っておいて、値下がり後に投資したら、いいかもしれません。
2017.10月号
自分で書く遺言書(自筆証書遺言)について前回に続き具体的な内容を見ていきたいと思います。
(1)遺言の内容を全て自筆で書くこと。
説明するまでもなく、遺言書の最初から最後まで全ての文字を自筆で書くという事です。本人が録音したものや、コンピューター時代だからデータで残すなどと言う事もいけません。
字が下手だから、手が震えるからと言うような理由があったとしても、ワープロやゴム印などを使ってはいけません、まして、代筆を頼むなどもってのほかです。全文自筆でないと遺言そのものが無効になります。
(2)作成日付
遺言書を作成した「日付」をきちんと書く事。これは、西暦でも元号でも結構ですが年月日、平成年月日を具体的な日付として書くと言う事です。
せっかく書くのだから「日」の良い日に書こうと言う事で、日付を「平成○○年○○月吉日」などと書くと「吉日」では日付が特定されないと言う事で無効になります。普通に日付を書く事です。
(3)作成者の氏名
名前を書かないと、だれの遺言書か分かりませんので、当然のことですが書いた人、遺言をする人が氏名を書きます。
屋号、芸名、雅号やローマ字表記のサインなどでも一概に無効とはならないようですが、「氏名」とされているので、後のいらざる争を避けるためにも戸籍上の氏名をきちんと書きます。
(4)印鑑
「印を押せ」と言う事ですから遺言書のどこかに印が押してあればよいとも思われますが、素直に遺言者の氏名の後に本人が書いたと言う事で印を押します。
印は実印にこだわる必要は有りませんが、シャチハタのスタンプやゴム印ではなく朱肉で押す普通の印にします。
以上の事柄を踏まえて作成すれば立派な「遺言書」になります。
それは「ここ20年、日本だけが発展の波に乗れずにいる」のか?です。
次の表を見てください。
なじみ深い国だけをピックアップしてみました。日本の伸び率は101%、ほぼ横ばいです。次に低いのがイギリスの144%、約1万ドルの差を、逆転されてしまいました。
もともと日本は高いGDPだから、伸びしろが少ないため、あまり変わらないのでしょうか。いえ、もともと日本と同じ位のアメリカで158%、同じ工業国と思っていたドイツが172%なのです。やはり、日本だけがとりのこされているようです。
それが何故かは、私にはわかりませんが、ここ20年の発展の主役が中国であること、日本の平均年齢が46.3歳と世界一位(アメリカは37.6歳、中国は36.7歳です)であることなど、いろいろ思い浮かびます。
ただ、この状況を考えると、日本で商売をやるよりも海外の方が発展しやすいと感じます。日本人の弱点は英語が話せないこと。でもアジアの国の未来像や、近い将来の問題点を経験しているという利点があります。また、直接進出しないでも、預金、株式、不動産などの資産投資の道も考えられます。
もちろん危険もありますので、慎重に情報を収集して行うべきでしょう。ただ、日本の報道はガラパゴス的に日本のことばかりなので、独自の情報収集が必要です。その一つとして、MBC合同会計をご利用ください。
2017.9月号
前回の話で相続に関する対策を行って、その計画が実際に実行されていく事が重要です、と申し上げました。
では、どのようにして自分が居なくなった後に自分の意思を実行していくのかと言う事ですが、家族が全員立派な人でお父さんの意思を汲み争いもなく皆の意見がまとまって相続が完了すると言うのが理想です。
しかしながら、現実はなかなかそう行かず、「私はこの財産が欲しい」、「もっと自分の金額を増やしてほしい」と言う話が出るのが当然だと考えて対処しておくことが大事だと思います。
財産分けで争いが起きそうになった時に自分が居れば、おやじの威厳で「俺の言う事を聞け」と一喝すれば済むことですが、悲しいことに相続でもめた時には自分は居ないのです。
その為には、自分が居なくなってからも己の意思を実現する方法として遺言書を作成して置く事が必要になります。
遺言書の必要なことを時々話すのですが、遺言書の作成は取りつきにくいと言うのが現実で、なかなか作成には至らないのだと思います。
遺言の方法について、法律的にはいくつかありますが自分で書く遺言書(自筆証書遺言)と、公証人役場で作る遺言書(公正証書遺言)の二通りを知っていれば十分だと思います。
その内、取りつき易さと、その気さえあればいつでもできる自分で書く遺言書についてご紹介して行きたいと思います。
遺言書の書き方は難しそうですが、次の事柄をきちんと守れば立派な遺言書としての効力を持ちます。
(1)遺言書の内容を自筆する
(2)作成した日付を記載する
(3)作成者の氏名
(4)印鑑
次回は、これらの内容についてみていきたいと思います
税や融資の新しい優遇措置をご紹介します。
会社が
A 生産性を年1%以上向上させるための設備(機械や備品など)を取得する計画
B 投資利益5%以上の設備(機械などの他ソフトウエアも可)を取得する計画
を立てて、その計画が一定条件を満たし、監督官庁に認定を受けた上で、実行すると
① 償却資産税が3年間1/2になる特例
② 取得資産について即時償却(全額一括償却)する特例
③ 取得価額の10%の法人税の特別控除の特例
④ 政策金融公庫からの別枠、低金利融資の特例
が受けられます。(②と③はどちらかを選択)
また、計画が無くても(認定を受けなくても)、一定の機械等を取得すれば取得価額の30%の特別償却または7%の法人税の特別控除が可能です。
ここで考えなくてはならないのが、特別償却と特別控除のどちらを選ぶかということです。
例えば、1千万円(耐用年数10年)の資産を買った場合で考えてみましょう。
特別控除=1千万円×10%=100万円+住民税の控除(100万円×12.9%)≒113万円
特別償却(即時償却)=特別償却費1千万円-普通償却費200万円=800万円(余分に償却できる額)
安くなる税額=800万円×税率37%=296万円(所得800万円以上の会社の税率)
特別控除113万円:特別償却296万円ですから、初年度は特別償却が得なのは明らかです。
しかし、特別償却を選択すると、翌年からの償却費が無くなってしまいます。(不利になる。)
一方、特別控除は普通に償却ができますので、2年目以降は特別控除が有利になります。
毎年、特別控除が少しづつ有利になって、だいたい5年目で、どちらでも同じになります。
最後(10年後)には、特別控除113万円、特別償却0円(1円も安くならない。)となります。
結論としては、毎年連続して利益が出ることを想定するなら、特別控除がお勧めです。
しかし、一寸先は闇、どうなるかわからないと思われる会社は、先行して税金が安くなる特別償却を選択するといいかもしれません。
先行して税金を安くすれば、その税額に対する利回り分が会社の利益になるという考え方もあります。しかし、数千万単位の設備投資でないと、安くなる税額といっても、あまり高額にはならないため、そこまで考える必要はないかもしれません。
資本金の額などにより、いろいろ条件が変わります。
詳しい内容をお知りになりたい方は、MBCの職員にお尋ねください。
2017.8月号
MBC合同会計の相続税無料セミナー(第11回)を7月14日町田で行いました。受講希望者が多く、定員を超えた方には受講をご遠慮して頂き大変迷惑をかけた次第です。
今までの無料セミナーで個別相談を含め相談・質問の内容から受けた印象は、相続対策と言いながらその中身は「相続税の節税対策」で、税金をいかに少なくするかと言う事が関心ごとの中心であるとの印象を受けました。
これは我々が税理士であることと、セミナーのタイトルからして当然と言えば当然の事なのでしょうが、「節税対策」は相続対策の一部であると言う事の認識が薄いように感じます。
相続の対策として考えるなら、次のようになるのではないでしょうか。
① 財産を誰にどのような配分で引継がせるのかと言う「分割の対策」、
② 各人への配分を決めたらその財産の管理・運営をどうするか「財産の管理対策」、また、
③ 実際の相続になった時に、各相続人がどのように相続税の納税資金を調達するかと言う「納税資金対策」を考えた上で、
④ これらと複雑に関係する相続税を少しでも下げるための「節税対策」が有るのだと思います。
これらを段階的・総合的に考えず、相続税の節税対策を突き進めますと、いざ本番と言う時に相続人間で遺産分割の合意が得られない場合や、分割はできたが納税資金が調達できないと言う事も起こります。
同じような額の財産を兄妹で相続したのに、税金の計算特例を誰にどう使うかによって相続人間の納付税額が異なり、話が違うと言う事で分割が振出しに戻ることも実務では起こります。
相続に関する対策の最終目標は、相続人間の争いがなく財産の承継が出来た上に相続税の節税ができることだと思いますが、その為には自分が元気な内に財産の分割や管理を前提とした「相続に関する対策」を進め、万が一の時はその計画が実際に実行されるようにしておく必要があると思います。
「うちの会社、いくらまでお金使っても大丈夫?」という質問が、たまにあります。
社長のやる気を感じられる、素敵な質問だと思います。
お金をつかう=投資するであり、会社は投資無くては回らないからです。
この質問は2つに分けて考える必要があります。
まず1つ目は、「借り入れをせず、今あるお金をいくらまで使っても大丈夫か」という問題です。
これは逆にいくら残せば大丈夫かということです。
これは、資金繰り表を作らなければ、分からないのですが、あえて一般論として言えば「今月の仕入・経費+借入返済額」です。これは言い換えると「今月支払うべき金額」の意味です。
これを残しておけば、たとえ今月の入金が無くても、支払いはできます。(当たり前のことですみません)
実際にはその間に今月の入金があり、それが来月の支払いの元手になります。
(その月の入金が来月の支払いに足りないような会社は、絶対に資金繰り表が必要です)
2つ目は、「借り入れをして、手元資金と合わせていくらまで使えるか」という問題です。
これは「当社はいくらまで借り入れが可能か」であり、それは「返済可能額」×返済年数で計算できます。
返済期間ですが、これは資金の使い途によって考えます。
運転資金ならば3~5年、設備資金ならば5~10年、不動産投資ならば20年以上というのが一般的です。
では棚卸資産(基本在庫)のための借り入れは、長期と短期どちらが適切でしょう?
例えば毎期末の棚卸(在庫)が800万円の場合、その800万円は寝たお金です。(必要悪です)
仕入れ資金と考えると、そもそも借り入れはだめ、という考えもありますが、この800万円は毎日、毎月毎年、固定的に在庫としてあるわけですから、意外にも長期の借り入れが適切といえます。
余談ですが、会社の最後の資金繰りは、在庫一掃セールです。
設備投資の場合、その資産の耐用年数が最長返済年数となり、これをあまり短くすると、返済がしんどくなります。
投資というと設備投資を連想してしまいますが、仕入れも、人を雇うのも、家賃を払うのも投資です。
そういう方は、お金を使う目的を、はっきり意識している方です。
2017.7月号
歳を取ってくると体のあちこちが傷んできます。膝が痛い、腰が痛い、歩くのに障害が出ると言うようになってきます。そのような障害の中でも一番困るのが「頭の障害」です。
こうなっても本人は一向困りません、むしろ悩みのない人生で一番幸せの時かもしれません。しかし家族は困った状況になります。
当てにしていたお爺ちゃんの預金が引き出せないのです。自宅やアパートの修繕が必要になり、家もアパートもお爺ちゃんの物だから今まで通りお爺ちゃんに払ってもらいたいのですが、銀行の窓口で「本人の意思が確認できないので引き出しできません。」と言われてしまう。
友達に相談したら、「それは裁判所で成年後見人の選任をして貰わなくては駄目だよ!」と言われてしまった。
この友達のアドバイスは正しいのです。弁護士に相談しても同じように言われると思います。
厚労省の発表によれば、軽度認知障害者を含めると800万人を超える障害のある年寄りがいるとのことですが、成年後見人が選任されているのはこの内数%との事で、90%以上の人は後見人の指定を受けていないと言う事です。
何故でしょうか、それは裁判所での選任手続きが煩雑で面倒であるとともに、この制度の使い勝手がよくないからです。
後見人は、被後見人本人のために財産を維持・管理するのですから、本人の建物修繕費の支払いはできるでしょうが、孫に対する学費の援助、息子夫婦に対する生活費の援助、相続税対策としての不動産の取得、贈与税の配偶者控除を適用するための配偶者に対する贈与などはできません。
しかも裁判所に選任された後見人が弁護士や司法書士などの専門家であれば報酬も支払わなければなりません。
このような状況になっても困らないように、お爺ちゃんが元気な内に後見人の選任を受けなくて済むように考えて対処しておくことが必要だと思います。
本人がボケてしまったら、成年後見人の選任以外に方法がありません。
何もしないで放っておくと、売上はどうなるでしょう?横ばい?
いいえ、間違いなく、下がります。 当たり前です。
頑張ってるライバルに客を取られる、値引きされる、顧客の倒産etc・・・売り上げが下る原因は外から勝手にやってきますが、増える原因は、自分で創るしかありません。
では、人件費は放っておくと、どうなるでしょう?
そうです。人件費は、年齢とともに上がっていくのが一般的ですね。
つまり、ほうっておくと、間違いなく売上は下がり、人件費が上がるのですから、会社の利益は減る宿命にあります。
努力をやめた会社、油断している会社、忙しくて現業以外に時間が割けない会社などは、そのままでは、必ず赤字になるということです。
以下は最近家電などでも業績を上げている、アイリスオーヤマ社長の言葉です。
日本のGDPはあまり変わらない。
これは「衰退している市場」と「成長している市場」があるということ。
もし、あなたがいる市場が衰退しているなら、成長している市場に移らないといけない。
この時に失敗する人が多いのは、だれでも儲かりそうな市場、みんなが注目している市場に行くからです。
そこは他社も次々に参入し、定員オーバーになり、競争が激しい市場なのです。
あなたの会社の強みが生かせる市場、自分の会社が勝てる市場を選択しないとなりません。
それは、面倒くさくて、人があまりやりたがらないところなどにあります。
アイリスオーヤマはプラスチック加工の会社で、倒産しかかったのですが、その技術を生かし、農業用の苗の育成箱、そして、園芸用のプラスチック鉢、さらに透明な衣装ケースなどを経て、今に至ります。
大山社長は「中小企業は毎年、経常利益の50%を新市場の開拓に投資するべき。」といいます。
メディアはよくV字回復した会社を取り上げますが、それはまれな例だから読み物として面白い。
実際には、社会の変化に徐々にあわせ、一歩づつ毎年、新しい市場に動くのがセオリーです。
仮に失敗しても、税金でとられたと思えば、あきらめもつくそうで、真に名言だと思います。
2017.6月号
世の中には法律や規則などの決まりと物事や手続きの実際が異なることがしばしば見受けられます。
税法などと言うものは、多くの事柄が杓子定規的に決められており、その通りに実行されて課税関係が完了するようになっています。
その一方、法律や規則で内容が決められているのに、実際の取引や手続きが決められた通りでないものがあります。
それは法律や決まりが作られた時から時間が経っていて現状に合わない事や、決め事の内容が社会に受け入れられず、決められている内容は知っているがこれに従った手続きなどをせず、今までの慣例や何らかの理由をつけて決められたとおりでない取引や手続きが行われているものがあります。
預金の相続手続きについてもその一つで、法律では亡くなった方の預金については、亡くなった時にその相続人が法定相続分として決められた割合で何ら手続きをする事なく直接それぞれの相続人が取得することとされています。
これについては、法律で決められた通りであるとする最高裁判所の判例まであるのに、相続人の一人がいざ預金を引き出そうと銀行の窓口に行くと、相続人全員の同意がないと払い戻しをしないと言われるのが多くの銀行の実際です。
このような状況の中で昨年暮れに最高裁判所は過去に出した自分の判例を変更し、預金についても遺産分割の対象になるとして、遺産分割協議の手続きが必要であるとする、銀行や実務に合うように判例を変更しました。
今後は、相続財産の預金についても遺産分割の手続きが必要であると言うように、法律も実際の実務に合ったものに改正もされていくことになると思われます。
この判例変更の裁判でマスコミも一時騒ぎましたが、今までも預金の払い戻しについては相続人全員の同意や遺産分割協議書によって処理され、遺産分割の調停などにおいても預金については分割協議の対象として扱われていましたので実際の相続手続きとしては、判例が変更された後でも相続の実際においては何も手続きは変わらないと言う事になります。
(いきなり、景気の悪いタイトルで申し訳ありません)
「日経トップリーダー」は数少ない中小企業向けの経済誌で、お勧めの月刊誌です。
その中に、残念ながら潰れてしまった会社の、その原因を探る「破綻の真相」という記事があります。
それらの会社はいずれも、以前は素晴らしい業績を上げていた、いい会社です。
それなのに潰れてしまうのは、いったいなぜなのか、特徴的な事例を二つほどご紹介します。
① 古いビジネスモデルから抜け出せない
シンエイ(ピーク時売上300億、婦人靴販売、2016年民事再生)
日食(海外有名ブランドの食品・菓子・洋酒の販売、2016年破産)
平和堂貿易(TVスポンサーなどで高い知名度。百貨店頼みの経営を最後まで変えなかった。2016年破産)
どれも百貨店向けの商売をしていたが、業績低迷。
アウトレットモールやショッピングモールなどに出店したり、インターネット販売にも乗り出したが、中途半端で力の入れ方が足りなかった。
それは、既存事業がそこそこの売上になるため、改革が手ぬるく、人員や資金も、まず既存事業に充てるというスタンスから抜け切れなかった。
改革をするのであれば、既存事業の人員、資金の多くを新規事業に移すくらいの、経営者の強い覚悟が不可欠である。
②手は打つものの見通しが甘い
テラマチ(部品メーカーとしては国内屈指の機械台数保有。小ロット化、短納期に対応できず。2016年民事再生)
中国の需要をあてにして、起死回生の中国事業を展開するも、中国の経済事情が変わり、発注がストップ。
設備投資の回収シミュレーションが甘いまま、楽観的に投資したことが、裏目に。
先進国全ての社会構造、ビジネスモデルが大きく変わるこれからの時代。
私達は、この事例のようにならないため、今までの常識を捨てる必要があるようです。
2017.5月号
今年の税法改正の中で、世間で関心のある配偶者の控除についての改正があります。世に言う「103万円の壁」の解消と言う事です。
パートなどで働いる場合に給与収入が103万円を超えると夫の扶養家族から外されるなどの理由から、これを避けるため就労時間を調整されるので、限度額を引き上げることにより働き易くしようとするのが狙いです。
この103万円の壁ですが、今迄においても配偶者の控除については「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の組み合わせにより夫の所得控除を計算するので、103万円をわずかに超えたからと言って直ちに控除額がゼロになると言う事はありません。
今年までは、配偶者の収入が103万円(所得金額で38万円)以下であるかどうかだけで判定していたのが、これからは夫の収入金額と配偶者の収入金額により配偶者控除と配偶者特別控除の額を計算することになります。
配偶者控除については、配偶者の収入が150万円(所得金額85万円)以下で夫の給与収入が1,120万円(所得金額900万円)以下の時に38万円の控除があり、夫の収入が増えるに従い段階的に控除額が26万円・13万円と減り、夫の収入が1,220万円(所得金額1千万円)を超えると控除額がゼロになります。
配偶者特別控除についても同様に、夫の所得金額を900万円から950万円、1千万円と段階を区切り、それぞれの区分と配偶者の収入で控除額を計算します。配偶者の収入が150万円を超えると徐々に配偶者特別控除の額が減り201万円(所得金額123万円)を超えると控除額はゼロになります。
夫の収入が1,220万円を超えると配偶者の収入金額に関係なく配偶者特別控除額は無くなります。つまり、夫の収入が1,220万円を超えると配偶者控除と配偶者特別控除の両控除額ともゼロになります
このように配偶者控除・配偶者特別控除の計算が複雑となり、また、年末調整の時に会社に提出する扶養控除の申告書等についても新設・変更があります。
この改正は平成30年分からですので、今後のパートさんの扱いや来年以降の源泉税の事務に備えて気に留めておくことが必要だと思います。
東京駅開業100周年記念のスイカの販売が完了したそうです。
当初の売り出し枚数をはるかに超える申し込みに、JRも全員に発送することで対応しました。
その数なんと、428万枚!
1枚2千円ですから、計算すると合計85億6千万円のお金がJRに入ったことになります。
(すぐに人の懐を計算するのが、税理士のせこいところですね)
この発行、発送にかかる経費が人件費も含め、45億円ほどだそうです。
この85.6億円の入金は売上ではなく預り金になり、実際にスイカで運賃をもらった時に売上になります。
JRはそれまで法人税も消費税も払う必要はありません。
(2000円のうち500円は使用不可能の部分なので、その分21.4億円はすぐに売上になります)
さらに発行費用の45億円は即座に費用になりますから、JRはずいぶん節税できたことになります。
加えて、記念カードという性質上、実際に使う人はほとんどいないのではないでしょうか?
スイカは最終利用日から10年で失効になりますから、そこでようやく売上になります。
つまり、10年間は税金無しのお金が事業資金として使えるということです。
こういう預り金ビジネス、バブルの時のゴルフ会員権、特約店契約、チェーン店契約などが代表的です。
うまくいけば、一気に無税のお金が集まり、それをもとに、事業を急拡大することが可能です。
(似ている業態に、建設業の手付金・中間金、仕入れ代金を手形で払う、敷金の預かりなどがあります)
ただし、このビジネスの怖いところは、「後で返さないといけない」ことです。
事業が右肩上がりの時は、問題ないのですが、逆の時は地獄の苦しみ、倒産することもあります。
(バブル後に、ものすごい数のゴルフ場がつぶれました)
つまり、預り金ビジネスはインフレにはいいが、今の日本のようなデフレには向かないということです。
JRみたいな巨大企業はともかく、我々中小企業には、管理しきれないビジネスモデルかもしれません。
2017.4月号
この3月の最終金曜日から「プレミアムフライデー」なる耳慣れないキャンペーンが取りざたされている。
内容は、ご承知のように経済産業省と経団連が中心となり毎月最後の金曜日の終業時間を繰り上げることにより、個人の消費を喚起し消費を拡大して経済活動を活発化させ、あわよくば国内総生産(GDP)の数値を押し上げようというものです。
このキャンペーンについては、賛否あるようですが、このような話の一方で残業時間について議論がされ、多忙期で月100時間未満とする労働基準法の改正がされるようです。
この100時間と言うのは、「過労死ライン」と言われ、これを超えると過労死する危険度が急激に上がると言われております。
日々の業務において、残業せずに業務がこなせるならばこれに越したことはありませんが、多忙期には長時間の残業に頼らざるを得ないのが実情です。
私ども税理士事務所も、確定申告の多忙期には超長時間の残業に頼り業務をこなしていると言う状態が毎年の恒例となっている始末です。
残業を減らすための業務処理の改善・効率化については職員とも議論・検討を重ね少しずつでも向上してはいるのですが、少し効率が上がったと思うと新規の制度が施行され新しい事務処理が増えたりします。今年の申告から個人番号の運用が本格実施となり、お客様の重要な個人番号の管理のためにより時間を必要とされたと言う事も残業の増加要因の一つになっております。
それでも業務処理の改善・効率化については諦めることなく、常に考え少しずつでも改革していく事は私どもに限らず顧問先様である皆様方にとっても、デフレ経済下において経営のやりにくい時代に生き残るための一つの方策でもあると思います。
地道な努力の積み重ねの結果、経営効率が改善されて残業が減り社員の健康も保たれた先に、会社全体でプレミアムフライデーを満喫できる日が来るのではないでしょうか。
会社に利益が出た場合、それを役員報酬でとるべきか?それとも税金を払ってでも会社に留保すべきか?
昔は、われわれ税理士が「社長、役員報酬を上げて節税しましょう」とお勧めしていました。
では今もそれが得策なのでしょうか?
一つのモデルケースをご覧に入れましょう。
総資産1億円、社長の役員報酬が600万円で、「総資産利益率7%」の会社があるとします。
総資産1億円の7%で、税引前利益が700万円です。これを、役員報酬を増額して、利差0にする場合を考えてみます。
法人税は均等割りの7万円だけ(資本金1千万以下)、役員報酬が600万+700万=1300万円になります。
この時、社長個人にかかる所得税・住民税は(扶養家族等の状況で違いますが)、だいたい200万円くらい増加します。(実際は社会保険料も上がりますが、ここでは計算に入れていません)
つまり、役員報酬で利益を0にした時の手取り額=700万-7万-200万(-社会保険料の増加額)=493万円(-社会保険料)となります。
では、会社に利益を残し、法人税を払ったらどうなるでしょう?
700万円の利益に対する法人税は均等割りも含め、180万円弱です。
手取りは700万-180万=520万円となり、27万円(+社会保険料)だけこちらがお得です。
しかし、このわずかな差が、20年、30年と会社を継続すると、大きな差になります。
会社に利益を残す(留保する)場合には、税引き後の利益が総資産に加算され、翌期の活動の元手が増えます。つまり、その利益が、翌期7%の利益をもたらすということです。
これを10年繰り返すと総資産は1.6億、20年で2.6億、30年で4億にもなり、その時の税引前利益は年2800万円にもなります。
役員報酬を取らないで経営することはできませんが、やみくもに高額にとらずに、会社に留保して、事業に再投資することも、一考すべきです。
今後ますます法人税が下がり、個人が上がる傾向ですので、この判断は当分続きます。
2017.3月号
今の時期、所得税の確定申告の最中で税理士事務所は多忙期となっており、職員一同毎日遅くまで確定申告の事務処理をしております。
過日、新聞に企業において社員の年末調整を行うのではなく、社員一人一人が確定申告をすべきだと言う提言を経済同友会がしているという記事が目に留まりました。
終戦までの我が国の制度は、税金も、お上が決め、国民はこれに従い納付すればよいというものでした。
戦後の占領政策の一環として、シャウプ博士の勧告により今の税制の基礎が敷かれたのですが、その中に所得税の源泉徴収制度があり、これにより、一般の給与所得者(サラリーマン)はその勤務先である企業で年末調整を行うことにより納税手続きが完結することとなりました。
この年末調整で完結する給与所得者にとっては、その意識としては戦前の制度と何ら変わらず、納税者としての自覚を高めることは難しいと思います。
経済同友会の提言は、これを一人一人の給与所得者が確定申告をすることにより、納税者としての義務と権利を自覚し、税金の使い道・政治にまで関心を持てと言う事であると思います。
国税庁から発表された資料によれば平成27年の源泉徴収義務者(給与の支払いをする企業)の数が352万件、その企業に勤める給与受給者の数が5,646万人とされています。また、確定申告の申告者数は2,151万人で、その内給与所得者の数は243万人となっています。
このことからして、仮にすべての給与所得者が確定申告をするとなると現在の確定申告件数より5千万人以上多くの人が確定申告をすることになります。
今の税務行政の中で、この申告件数の処理は徴税のための増加費用だけ考えても不可能だと思われます。
今の源泉徴収制度は、給与の支払い者である各企業が源泉税の徴収・年末調整をすることにより膨大な額になる徴税のための費用を国に代わって負担しているとも言えるのではないでしょうか。
例えば、新しい機械を3000万円で買ったところ、ろくに使わないうちに全く同じ機能の機械が500万円で売り出されてしまった。
維持費も、今の機械は毎年600万かかるが、新しい機械は300万で済む。あなたなら、どうしますか?
感覚的には、新しく買い替えることなど、悔しくてできそうにありません。
でも、正解は500万円の機械に買い換えることです。 この場合の3000万円の機械のことを会計用語で「埋没原価」と言います。
買い換えない場合、2年間で600万×2年=1200万円の支出があります。
買い換えた場合は、500万(機械代)+300万×2=1100万円の支出で済みます。
つまり、キャッシュで考えた場合、2年たたないうちに、買い換えた方が得になってしまいます。
どちらの場合でも、3000万円は支出した後の話ですから、考慮する必要はないのです。
(新しい機械が発売された時点で古い機械は、会計上は損失と認識します)
このように割り切って、新しい機械を買い換えられない、古い機械にとらわれることを、「埋没原価の呪縛」といいます。
先に支出した3000万円にとらわれて、これからの支出の比較に目がいかないのです。
さらに、実際には、3000万円の機械は除却するはずですので、その損失(支出ではありません)が節税となり、1000万円くらい法人税が安くなって、買い換えた方が圧倒的に有利になります。
ここまで極端なケースは無くても、あなたの会社にも「埋没原価」はありませんか?
1年以上売れない商品、使っていない機械、土地、ゴルフ会員権、レジャークラブ会員権など。
あるいはもう値上がりの可能性の無い有価証券など。
これらがもし売れるのならば、売りましょう。それがお得な節税です。
つまり、資産を売ってキャッシュが増えるのに、損失が計上され、税金が安くなるからです。
これに比べると、利益が出たから、期末近くにあわてて経費を使うというのは、損な節税です。
節税は支出額の3割強に過ぎず、キャッシュは減ってしまうからです。
そもそも、本当に必用な物であれば、期末まで待たずに、買っているようにも、思いますが。
2017.2月号
今年もいよいよ確定申告の時期となりました。最近は、町の八百屋さんや魚屋さんと言った個人事業を行う人の申告がめっきり減り、会社勤めの人や会社の役員などの給与所得に関する確定申告が多くなりました。その中でも医療費控除の適用を受けて所得税の還付を受ける為の申告もかなりの件数に上がります。
昨年一年間に支払った医療費の合計額が10万円か所得金額の5%を超えるときは確定申告をして払い過ぎた所得税の還付を受けます。
つまり一般的には、10万円を超えなければ医療費控除で控除できる金額が無かったわけですが、平成29年分(来年のこの時期に提出する分)からは、セルフメディケーションとしての薬代が1万2千円を超える場合には医療費控除の適用ができることになりました。
その内容を簡単に触れておきます。
1.新しい医療費控除の制度を受けられる人
次のいずれかの診査・診断を受けている人
① 特定健康診査 ②予防接種 ③定期健康診断 ④健康診査 ⑤がん検診
2.対象となる医薬品
厚生労働省が指定した特定の医薬品(薬局の領収書に表示がされる。)
3.医療費控除の額
対象医薬品の購入金額が1万2千円を超える部分で、最高限度額8万8千円までの金額が対象になります。
4.手続き
確定申告により今までの医療費控除を受けるか、この医薬品控除の新しい制度で控除を受けるか、どちらか一つの選択適用となります。
証明資料として、上記1の診査・診断の証明書と医薬品の明細書の添付が必要になります。この新しい制度の適用を受けるのであれば、来年の申告のために、今年の1月からの対象医薬品の領収書を保存して置く事を忘れないようにして頂きたいと思います。
去年、電通の若い女性社員が、過重労働を苦にして自殺してしまった事件は、その後、大手の会社のサービス残業や違法残業の実態を次々と世間にさらすことになりました。
電通では、中興の祖と言われる第4代社長「鬼の吉田」の「十則」が残業を助長したという世論に従い、この「鬼の十則」を社員規範から外すようです。
では、その内容は、違法残業を助長するようなものなのでしょうか?お読みください。
1.仕事は自ら「創るべき」で、与えられるべきではない
2.仕事とは先手先手と「働きかけて」行くことで、受け身でやるものではない
3.「大きな仕事」と取り組め 小さな仕事は己を小さくする
4.「難しい仕事」を狙え そして之を成し遂げるところに進歩がある
5. 取り組んだら「放すな」 殺されても放すな 目的完遂までは
6.周囲を「引きずり廻せ」引きずられるのとは永い間に天地の開きができる
7.「計画」をもて 長期の計画を持っていれば忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生まれる
8.「自信」を持て 自信が無いから君の仕事には迫力も粘りもそして厚みすらない
9. 頭は常に「全廻転」 八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ サービスとはそのようなものだ
10.「摩擦を恐れるな」摩擦は進歩の母、積極の肥料だ でないと君は卑屈未練になる
10項目全ての基礎となる考え方は、「自主性」、みずから仕事を創り出し、プライドを持て、ということだと思います。つまり、いやな仕事を「させられて」、違法残業「させられて」という受け身の立場とは正反対のことを言っています。
たぶん、経営者の方ならば、いいことを言ってるなと、感じると思います。
だから私は、「鬼の十則」を削除する、と聞いた時、とても違和感がありました。
これが悪いという人は、仕事は与えられるもの、いやなもの、と思っている人だろうと思います。
そういう人が部下に残業を強制するときには、この「鬼の十則」は利用できるかもしれません。
それは弱いものが弱いものを酷使するという、とてもいやな図式です。(残念ながら実際にはよくありますが)
今回の事件は、「鬼十則」が悪いのではなく、大企業のそういう体質が問題なのだと思います。
仕事はつらく大変な面もありますが、やりがいもあり、成果が出ればつらさよりも、喜びが勝ります。
我々中小企業の経営者は、つらいことばかりですが、サラリーマンと違い、自ら仕事をしているという気概と喜びだけは忘れずにいきたいものですね。
2017.1月号
新年あけましておめでとうございます
今年も宜しくお願い申し上げます。
昔、人生には三つの「さか」があると言った首相が居りました。一つは「上りさか」もう一つが「下りさか」三つ目が「まさか」だそうです。
昨年、イギリスは国民投票でEU離脱を決定し、イタリアでは国民投票で首相の信任投票と言われた憲法改正案が否決され、アメリカの大統領選ではトランプ氏が選出されました、また、隣の韓国では大統領が弾劾される事態となっています。
国内では12月になり賭博開始に向けた法律の成立など、今まで安定的に推移してきた世界や国内の状況が「まさか」と思えるような事件や事態が頻繁に起きました。
これらの問題の根底にあるものは、世界的に、安定した経済発展が難しい時代になった事にあると言われています。
大航海時代に始まった地理的・経済的なフロンテアの開発も今や地球上には無くなりつつあります。そこで考え出されたのが金融市場と言う経済空間でしたがその限界もリーマンショックで証明されたとされております。
これらのフロンテア開発は、経済空間を世界的に広げていくいわゆる経済のグローバル化でした。
「まさか」の連続はこのグローバル化の反動であり、自国の国益をまず優先させるという考えの顕在化であるとも言われております。
税金の世界でもこれらの状況と無縁ではなく、12月に発表された税制改正大綱においても、いわゆる超富裕層が税金の安い国に出国したり、居住したりする際の課税強化策などが盛り込まれています。
これからは今までの経験則ではありえないような「まさか」が日常的に起きるようになり、会社の運営もより厳しくなることと思います。
将来に繋げるため、経営に今まで以上の工夫や努力を重ね、予想もつかない「まさか」の事態の勃発に備えることが必要だと考えます。
明けまして おめでとうございます。
昨年同様、いえ、それ以上に頑張りますので、今年もご愛顧くださいますよう、お願いいたします。
相続税の申告をやっていて最近感じるのは、被相続人の方の年齢が高くなってきたなあ、ということです。
90歳以上の方も結構いらっしゃいますし、80歳も後半の方が多いようです。
70歳代はまれです。(相続人も高齢で、いわゆる老々相続ですね)
ライフシフトという本に、人が100年以上生きる時代が来ると書いてあります。
平均寿命は10年ごとに2~3歳延びており、このペースは減速する気配がないそうで、その計算だと、1998年生まれ以降は100年以上生きる可能性が高いそうです。
これは今の18歳以下の人です。
そこまでではなくても、今60歳の人で89~94歳、50歳の人で95~98歳の計算になります。
長生きはおめでたい、祝福すべきことですが、おっとどっこい、老後の経済を考えると、そう喜んでもいられません。
100年生きる人が22歳から65歳までの現役時代の収入で、定年後の100歳までの生活を、賄えるのでしょうか?
現役時代の43年間で、65歳から100歳までの35年間分の蓄えができるのでしょうか?
これはどう考えても無理で、年金制度の疲弊も含め、引退年齢を引き延ばすしかありません。
老後の生活費を現役時代の50%しかかからないと考えても、現役時代にずっと10%の貯蓄や年金を蓄えて、それでもなんと80歳まで現役で働く必要があるそうです。
これからの会社経営にこの流れは大きな影響を与えます。
定年延長はもっと進みます。(先行して会社で延長すると補助金の対象になります)
最近政府が「正社員の副業を後押し」する指針を打ち出しているのも、高齢化で終身雇用ができなくなるのを見越してのことでしょう。
老人の単純作業労働への転職や、新しい仕事に就くためのスキル教育など。
「超高齢化」は今後、絶対にはずすことのできない視点です。