税理士からのメッセージ

MBC合同会計ニュース

2024年4月号

『令和6年度税制改正・住宅ローン控除(子育て支援制度)』

 
 今月は小林税理士のメッセージ同様に、令和6年に限定した税制改正項目である住宅ローン控除についてご紹介いたします。今回の住宅ローン控除の改正については子育て世代を対象とした優遇税制となっています。若い夫婦や子育て世代に限って、引き下げ予定であった住宅ローン減税の借入限度額が令和6年も維持されるという改正です。
 

改正のポイント
 
(1) 対象者
 1 年齢40歳未満かつ配偶者を有する個人
 2 年齢40歳以上かつ年齢40歳未満の配偶者を有する個人
 3 年齢19歳未満の扶養親族を有する個人
(2) 対象住宅と居住年月日
 一定の省エネ基準等を満たした住宅(注1)を新築等し、令和6年1月1日から令和6年
 12月31日までに居住の用に供した場合に適用されます。
 (注1) 一定の省エネ基準を満たした住宅等とは
 1 認定住宅…………………認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅
 2 ZEH水準省エネ住宅 ……日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を満たす高い省エネ性能を有する住宅
 3 省エネ基準適合住宅……日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅
 
まとめ
まとめ

2024年3月号

『相続税対策の基本』

 
相続対策とは残された遺族の方々に相続税の納税・相続手続き等の精神的な負担を最小限にしておくことだと思います。具体的な対策としては家族の状況や財産の内容によって異なりますが、一般的な対策としては以下の様に大別できます。
・相続手続き等に関すること
・遺産の分割に関すること
・節税対策と納税対策に関すること
 
① 相続手続き等に関すること
 家族でも亡くなった人の財産を全て把握していることは意外と少ないものです。近年ではネット銀行などで取引される方も多くなっています。その場合遺族の方は通帳や郵送物が無いのですぐに見つけることが出来ません。なのでエンディングノートや遺言に添付する財産目録を作成しておきましょう。また相続手続きには亡くなった人名義の預貯金・有価証券・生命保険などの解約や給付金の申請等、様々な手続きが必要です。どこの証券会社や生命保険会社と取引があったのか、ここでもエンディングノート等を作成しておけばご家族の負担を減らすことが出来ます。
 
② 遺産の分割に関すること
遺言書を作成することにより、遺産をどう分けるかを生前に決めておくことが出来ます。相続人どうしでは話し合いが出来ない、あるいは纏まらないと思われるときにはとても有効です。このように分けて欲しいという気持ちをエンディングノートに書き留めておくという方法もありますが、それを確実に実行してもらうには法的に有効な遺言書でなければなりません。おすすめは公正証書遺言で、公証人や証人といった第三者の立会いのもとで作成しますので、あとから「誰かが強要してかかせた」等の争いになっても有効とされる可能性が高いと言えます。
 
③ 節税対策と納税対策に関すること
相続税額を少なくするためには・相続財産を減らす・相続人の数を増やす・財産の評価額を下げるのいずれかです。
相続財産を減らす対策として有効な手段は生命保険の活用です。被相続人が契約者の死亡保険金には相続人一人当たり500万円の非課税枠があるのと同時に納税資金の準備もできます。相続人を増やす対策としては、被相続人に実子がいなければ2人まで、実子がいる場合でも1人を養子として法定相続人にすることが出来、相続税の基礎控除の額を増やすことが出来ます。財産の評価を下げる一般的な方法として小規模宅地の評価減等があげられます。
相続対策には他にも色々ありますが、準備期間を十分にとった方が節税効果が得られることが多いので早めに税理士に相談されることをお勧めいたします。 最後までお読み頂きありがとうございました。

2024年2月号

『新NISAの概要』

 
 今月のメッセージは年明けから何かと話題となっている新NISAについて触れていきたいと思います。NISAとは少額投資非課税制度ともいい2014年から始まりました。NISA口座を利用して得られた株や投資信託等の運用益については本来約20%の税金が課税されますが、それが非課税とされる制度の事です。
 
①改正に至った背景
 現在個人が所有している金融資産のうち大半が現金預金で所有していると言われています。政府としては現金預金を動かし金融市場を活性化させ、経済成長や雇用の増加に繋げる狙いと、従来のNISA口座の開設数が日本の総人口のわずか9%ほどであったということからもっとNISAを活用して将来にむけて資産を増やして下さい、という思いがあるようです。
 
②新旧比較
※つみたてNISAがつみたて投資枠へ 一般NISAが成長投資枠へ変更となったイメージです。

・非課税期間 旧NISAには非課税期間に期限がありましたが無期限に改正されました。それにより配当金についてはずっと非課税で受け取ることが可能になりました。
・年間投資限度額 新NISAでは積立投資枠が120万円、成長投資枠で240万円に増額され、なお新NISAでは併用が出来るため最大360万円まで投資が可能となりました。
・生涯非課税限度額 非課税保有限度額が合わせて1800万まで拡大。成長投資枠の生涯限度額は1200万までですが、つみたて投資枠のみなら1800万まで積立が可能です。
・売却枠の再利用 従来のNISAでは一度使用した非課税枠の再利用はできませんでしたが、新NISAでは売却して空いた枠は非課税枠として再利用が可能となりました。(枠の復活は翌年以降になる)
 
 新NISAに改正されメリットが増えましたが、あくまでも投資である点については留意しておきましょう。今月は新NISAの概要について触れましたが、機会があれば次回以降で続編をお伝え出来ればと思います。

2024年1月号

『税法が改正されるまでのプロセス』

 新年あけましておめでとうございます。本年も皆様方にとってすばらしい一年になりますよう、MBCの職員一同心よりお祈り申しあげます。
 昨年の岸田総理は増税メガネなどと揶揄されておりましたが、今月は税法を改正するにはどのようなプロセスを経て行われるのかを見ていきたいと思います。
 
税法が改正されるまでの流れ
①各省庁から税制改正要望の提出
 毎年8月末までに様々な業界団体、税理士会や各省庁が次年度以降の税制について改正してもらいたい項目を要望書として提出します。
 
②政府税制調査会での議論(9月~10月)
 提出された要望書は、各界の代表者や学識経験者等から構成される政府の税制調査会で中長期的視点から「税制の在り方」が検討されます。
 
③与党税制調査会での議論(11月~12月上旬)
 政府の税制調査会で中長期的視点から税制の在り方を検討する一方で、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等の審議をします。そして審議の結果、税制改正大綱に最も近い形の最終処理案が作成されます。
 
④与党による「税制改正大綱」が発表される(12月中旬)
 税制改正大綱は法案の原案となる重要なもので税制調査会を中心に改革案を検討しまとめたものです。大綱をみれば税制改正の内容がおおよそ分かります。
 
⑤政府による「税制改正の大綱」が発表される(12月下旬)
 与党の税制改正大綱を踏まえて税制改正の大綱が閣議に提出されます。閣議とは総理官邸の閣議室で開催される内閣総理大臣と国務大臣による会議の事で、そこで決定された税制改正の大綱と予算案を基に法案が作成されます。
 
⑥税制改正法律案を国会に提出(翌年1月から4月)
 閣議決定された税制改正の大綱に沿って国税の改正法案については財務省が、地方税の改正法案については総務省が作成し国会に提出されます。
国会では、衆議院と参議院のうち、まず先に改正法案が提出された議院において、財務金融委員会(衆議院)若しくは財政金融委員会(参議院)又は総務委員会での審議を経て本会議に付されます。可決されるともう一方の議院に送付され、そこでも同様のプロセスによって可決されると改正法案は成立し、改正法に定められた日から施行されることになります。※1
 
  ※1 出典:財務省「身近な税について調べる」

2023年12月号

『税金を滞納するとどうなるのか』

 
 税金には所得税、住民税等、様々な税金がありますが、どんな税金にも必ず納期限というものがあります。しかし色々な事情から税金を納期限までに納められない状態(滞納)になってしまうこともあるかもしれません。今月は万一税金を滞納してしまったらどうなるかを見ていきたいと思います。
 
滞納処分の流れ

 
◇督 促
 税金を滞納したからといって即座に財産が差押えされるわけてはありません。

まず、国税については原則納期限から50日以内に、地方税については20日以内に督促状が送られてくることになっています。督促状を発送した日から10日以内に税金を完納しないと法的に差押えが可能な状態になります。
 
催 告
 催告催告とは差押えをする前の最後通告の様なものです。督促は法的手続きですが催告は役所がサービスとして行っているものなので、催告をしなくても差押えすることは可能です。
 
財産の調査・捜索
 差押えを行う前にまず必要となるのは滞納者の財産の把握です。税務署等の役所は滞象内者の財産を把握するための「質問検査権」と言われる権限が与えられています。質問方法は文書や口頭で行われる任意の調査ですが理由もなく拒むと罰金が科されます。もう一つの捜索ですが、ニュース等でよく見られる役所の職員が自宅や会社にやってきて直に財産を確認する家宅捜索の事です。この段階になると強制調査になるので財産を捜索しながら差押えをしていくことも可能です。
 
換価処分
 税金は金銭で納付することが原則となっています。そのため金銭以外の財産の差押えが行われた場合には金銭に換える必要が出てきます。これを換価処分と言います。
 不動産や動産についてはオークションなどの競売手続きを経て換金されていく事になります。
 
滞納税金に充当
差押え財産が換金されたら滞納税金に充当され、充当後に余った金銭は滞納者に返金され一連の手続きは完了となります。万一納付が困難な状態になってしまった場合には「納税の猶予」という制度もありますので税理士や職員にご相談ください。

2023年11月号

『迫る電子帳簿保存法のスタート! 要点のおさらい』

 
 先月の10月1日から消費税のインボイス制度がスタートしましたが、年明けからはいよいよ電子帳簿保存法も始まります。「結局の所どうなの?よくわかんない!」と思われている方もいらっしゃると思いますので要点をおさらいしていきたいと思います。
 
 ◇電子帳簿保存法の原則的な取扱い
 2024年1月1日からはすべての法人、個人事業主はデータで受け取った領収書や請求書は紙に印刷せず、データのまま保存することが義務化されます。(下記の表参照)
 保存するときはファイル名に日付・取引先・金額の要件で検索出来るように保存する。
   《ファイル名 例》 2024.1.1_❍❍商事_15000

 
◇検索要件の特例が認められる場合 (電子データとしての保存は必要です)
 税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることが出来る様にしている場合で以下に該当する事業者

  1. 2年前の売上高が5000万円以下の事業者
  2. 電子取引データをプリントアウトした書面を、日付・相手先ごとに整理し提示・提出する事が出来るように

   している保存義務者
 
◇データの改ざんを防ぐための措置を設ける。

  1. 自社でタイムスタンプを付す。
  2. タイムスタンプが付されたデータをもらう。
  3. データの訂正・削除が出来ないシステムで保存若しくは履歴が残るシステムを利用する。
  4. 訂正・削除に関する事務処理規程を定めて運用する。 ←おすすめ
    (事務処理規程については国税庁のHPで法人用と個人用のひな形を参考にできます。)

 

2023年10月号

『年収の壁』について解説

 今月は年収の壁と言われるものについて整理していきたいと思います。親やパートナーの扶養の範囲内で働きたい等と考えた場合、いくつかの年収の壁があります。年収の壁には税制上の壁と社会保険上の2つの壁が存在します。
 
◇税制上の壁 (100万・103万・150万)
・100万円の壁とは
 年収が100万円を超えると一般的にご自身に住民税が課税されてきます。
 ※自治体により若干異なる場合があります。
・103万円の壁とは
 年収が103万円を超えると、ご自身に所得税が課税され、さらに扶養控除等が受けられなくなり親や配偶者の税金も上がることになります。※配偶者特別控除の適用は有
・150万円の壁とは
 年収が150万円を超えると配偶者特別控除という所得控除の額が減少し始めるボーダーラインです。
 パートナーに満額、配偶者特別控除を受けさせたいのであれば年収を150万円以下にすることです。
 
◇社会保険上の壁(106万・130万円)
・106万円の壁とは
 2016年10月に106万円の壁という新しい壁が出現しました。106万円の壁とは社会保険料がかからずに済むボーダーラインの一つで、パート・アルバイト等の短時間労働者が次の基準を満たすと約106万円から社会保険加入の対象となります。
 ①勤務先の従業員数が101名以上(24年10月以降は51人以上)
 ②週の労働時間20時間以上
 ③月額報酬が88,000円以上
 ④2カ月以上勤務見込みあり
 ⑤学生ではない
・130万円の壁とは
年収が130万円以上になると親やパートナー等の社会保険上の扶養から外れることになり、勤務先の社会保険に加入するか自分で国民健康保険及び国民年金に加入する事になります。注意すべきは税制上と違い130万円には交通費が含まれることです。
 それぞれの壁について一覧表にしましたので参考にして下さい。

2023年9月号

近年の税務調査の傾向  

 2023年の税務調査の件数がコロナ前の水準に戻ってきています。ただ税務調査は本来、課税庁が納税者の申告に誤りがないかを「課税の公平」の見地から行われるものです。納税者は正しく申告をしているのであれば何も怖がることはありません。結果として、誤りがあったとしても軽微なもの、税務署との考え方の相違などはよくあることですので、「どうぞ確認して下さい。」位の前向きな気持ちで調査官を迎えるのがいいと私は考えています。
 
◇調査の対象となりやすい会社
①利益の変動が激しい会社
②業績が上がり繰越欠損金(過去の赤字)を使い切った会社
③同業他社に比べて粗利等に異常値がある会社 ※
④長年調査が来ていない会社 等
※税務署にはKSKシステム(国税総合管理システム)といわれ、あらゆる事業所の損益に関する統計データが集められており、その数値を参考にしています。
 
◇最近の税務調査の現状
 調査に来られる調査官の人数が減少傾向にあり、従来はベテラン調査官がOJTを兼ねて新人調査官を連れて来ることが多かったが、最近は新人調査官が一人で来ることもあり、その場合調査内容についてピントがずれていることもあります。
 また、定年退職した調査官にパート勤務で働いてもらい調査に出てもらうケースもあり、この場合、調査官の出勤日数が少ないため、調査後の話し合いに時間がかかることがある。いずれにしても税務署の職員の人手不足が原因と思われます。
 
◇調査で必ず聞かれる(確認される)事
①業務内容・・・・・・調査初日の1時間位を使いヒヤリングします。
②売上の計上のタイミング゙と在庫の計算根拠・・・・・・売上高とそれの対応する売上原価がきちんと対応しているかを確認します。
③仕入先等の社名と住所・・・・・・これは反面調査の際に使用するものと思われます。
④家族役員や家族従業員の業務内容・・・・・役員であれば本当に経営に従事しているのか、一般の社員であれば出勤簿等はあるか。
⑤社長の趣味や飲食代の内容など・・・・・・飲食代については面倒ですが、誰とどんな打合せをしたかをレシートの裏などにメモしておくと認められやすいです。
 
◇税務調査中の税理士の役割は
 税理士は会社の申告内容について把握していたとしても、その詳細については社内の方にしか分からないことが多いです。当然、調査官の質問は社長や経理担当者に対して行われます。その際、調査官の質問にいきすぎはないか、質問の内容が正確に社長や経理担当者に伝わっているか、会社側からの説明(回答)が正しく調査官に伝わっているか等をフォローしていきます。
 そして一番大切な役割は不安を抱えている社長や経理担当者の精神安定剤になることだと思っております。

2023年8月号

固定資産税の仕組みを知る  

固定資産税の納税義務者
 固定資産税は毎年1月1日現在、土地や建物の不動産を所有している人について課税される税金です。なので年の途中で不動産を売却した場合でも1月1日現在の元の所有者が納税義務者となります。ただ、年の途中で不動産の売却が行われた場合には、一般的に固定資産税の納税負担割合を、年の所有期間で案分する等の措置が取られることが慣例となっています。
 
固定資産税の課税方法
 所得税や法人税は納税者本人が自ら納税額を計算して申告と納税(申告納税方式)を行いますが、固定資産税は役所が固定資産税評価額を決め、その評価額を基に納税額が決定(賦課課税方式)されます。固定資産税の基となる評価額は、時価や実際の売買価格ではなく固定資産課税台帳に登録された価格であり、総務大臣が定めた固定資産税評価基準に基づいて評価・決定された価格です。
 
固定資産税の計算方法


 
土地・家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度
 固定資産税の納税者が、自分が所有している土地・建物と、他の人が所有している土地・建物の評価額が公平・適正であるかどうかを比較確認出来る様に縦覧制度が設けられています。
 縦覧期間・・・・・ 毎年4月1日から約2ヶ月 (市区町村によって異なります。)
 縦覧できる人・・・ 納税者 納税者の代理人 相続人 納税管理人
 手数料・・・・・・・ 無料 
 
ご興味のある方は一度、縦覧制度をご利用されてみては如何でしょうか。

2023年7月号

決算書から何がわかるのか(P/L編) 

 今月は先月に引き続き、株主総会の決算報告で説明される損益計算書の内容について見ていきたいと思います。損益計算書を簡単に解説すると、一定期間(事業年度)における経営成績を表したものです。
 
 損益計算書の内容
 損益計算書は、一会計期間においていくらの収益が上がり、一方その収益を獲得するためにいくらの費用を使ったのかが示されています。損益計算書は一般的に「売上高」、「売上原価」、「販売費及び一般管理費」、「営業外収益」、「営業外費用」、「特別利益」、「特別損失」の7区分から構成されています。

  • 収益の種類  7区分のうち売上高、営業外収益、特別利益が収益項目です。

 売上高・・・・・・・・・一会計期間において商品や製品の売上によって得られた収入
 営業外収益・・・・・受取利息や有価証券の売却益等、本業以外から生じた収入
 特別利益・・・・・・・固定資産の売却益など臨時的な収益

  • 費用の種類   7区分の内、売上原価、販管費、営業外費用、特別損失が費用項目です。

 売上原価・・・・・・・当期に販売した商品等についての仕入並びに製造に要した費用
 販管費・・・・・・・・・販売活動と経営活動から生じた費用
 営業外費用・・・・・支払利息や有価証券の売却損等、本業以外から生じた費用
 特別損失・・・・・・・固定資産の売却損など臨時的な損失

  • 利益の種類

 売上総利益・・・・・売上高とその商品原価との差額で、粗利益とも言われます。
 営業利益・・・・・・・会社の本来の営業活動から稼ぎ出した利益を示します。
 経常利益・・・・・・・営業活動以外の財務金融活動から生じた損益をも含む、正常な企業活動から生じた利益でよく「ケイツネ」と呼ばれています。  
 当期純利益・・・・・臨時的な損益をも含む、一会計期間のすべての取引から生じた利益を示します。

  • 利益の見方(考え方)
例えば、当期純利益が赤字であっても営業利益・経常利益が黒字であり、その期にたまたま固定資産の売却損等があっての赤字であれば、さほどの心配はいりませんが、その逆のケースもありますので各段階の利益は注意してみる様にして下さい。
 

2023年6月号

決算書から何がわかるのか(B/S編)

 
この時期になると株主総会の様子が経済ニュース等でよく取り上げられるのを目にします。これは日本の企業の多くが3月末を決算期としているため、5・6月に株主総会の開催が集中するためです。そして総会の報告内容として、計算書類(決算書)の説明が必ず行われます。一般に決算書というと、おもに貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)とキャッシュフロー計算書(C/F)の3つを指しますが、今月は決算書の貸借対照表の内容と見方について簡単に解説していきたいと思います。
 
①貸借対照表の内容

  • 貸借対照表には、決算日現在の資産・負債及び純資産の残高が表示されます。資産は企業が調達した資金の運用形態(元手をどのように使ったか)を示したものであり、負債及び純資産(株主資本)は、資金の調達源泉(元手をどこから集めたか)を示したものです。資金の調達は貸借対照表上の右側に「負債・純資産の部」として表示され、資金の運用については左側に「資産の部」として表示されます。この左右の金額は必ず一致しますので貸借対照表はバランスシート(B/S)とも言われます。

    資産の部には、現金預金や商品等の流動資産・土地や建物等の有形固定資産・借地権等の無形固定資産・ゴルフ会員権や投資有価証券等の投資その他の資産が計上されます。
    負債の部には借入金のうち、1年以内に返済期限が到来する短期借入金や買掛金等の流動負債・1年を超えて返済期限の到来する長期借入金等が計上されます。

 
②貸借対照表から読む企業の安全性

  • 貸借対照表の右側には資金の調達方法(負債か自己資本)が表示されていますが、このバランスが企業の安全性を評価する上でとても重要になります。負債は他人資本とも言われいつかは返済しなければなりませんが、純資産は自己資本ですので返済の必要はありません。なので自己資本の割合が高いほど、財務的に安定しているといえます。一般的に、自己資本が5割を超えていると良好といわれます。少なくとも3割程度は確保しておきたい所です。まれに、資産の部の金額よりも負債の部の金額の方が大きくなっている会社がありますが、これは債務超過といい危険な状況であるといえますので、何らかの対策が必要な会社だと読み取れます。

2023年5月号

キャッシュレス納付の多様化

 
 従来、税務署や銀行での窓口納付が基本だった納税方法も、24時間対応のコンビニでの納付やパソコンなどからインターネットバンキングを利用する事で外に出かけなくても納税が出来る様になりました。さらに令和4年12月1日から、国税の納付手段として各種Pay払いを使用して納付する、スマホアプリ納付が加わりました。スマホアプリ納付とは、国税庁長官が指定した納付受託者が運営するスマートフォン決済専用のwebサイトからPay払いを利用して国税を納付する方法です。
 2023年3月現在利用できるのは以下の6種類となっています。
①PayPay  ②d払い ③au PAY ④LINE Pay  ⑤メルペイ ⑥Amazon Pay
メリットと注意点は以下の通りです。
メリット
1.手数料が無料。 
2.スマホに住所・氏名・税目・支払金額などを入力するだけで納付が完了する。
3.本税だけでなく加算税や延滞税等の納付も可能。
4.納付完了メールが受け取れる。 
5.家族の国税も納付可能。
 
注意点
1.納付金額が30万円以下の場合に利用可能。
2.領収書は発行されない。
3.スマートフォン専用サイトのためパソコンでの利用は出来ない。
4.振替納税を利用されている方はあらかじめ税務署へ連絡した上で利用しないと二重払いになる可能性がある。
 
 従来からある納付方法もまとめてみましたので参考にして下さい。
ダイレクト納付・・・・・・・・・・・・・・e-taxによる操作で預貯金口座から振替により納付する方法
クレジットカード納付・・・・・・・・・国税クレジットカード゙支払いサイトを運営する民間業者に納付を委託する方法
コンビニ納付・・・・・・・・・・・・・・・QRコードやバーコード付の納付書でコンビニの窓口で納付する方法
振替納税による納付・・・・・・・・予め税務署に振替依頼書を提出し、預貯金口座から振替により納付する方法
インターネットバンキング納付・・インターネットバンキング゙から納付する方法
窓口での納付・・・・・・・・・・・・金融機関や所轄の税務署で納付書により納付する方法
 
 近々楽天ペイもキャッシュレス納付の対応予定だそうです。日常的にPay払いを利用している方にとっては今回の導入は朗報と言えるのではなでしょうか。

2023年4月号

企業版ふるさと納税について

 
 皆様、今年も確定申告お疲れさまでした。今年も皆様の確定申告のお手伝いをさせて頂きましたが、目立った所では年々ふるさと納税を利用される方が増えてきていることです。総務省の調べでは2022年でのふるさと納税の利用者数は約740万人で全体の約13%になるそうです。個人版のふるさと納税は注目されていますが、実は企業版のふるさと納税もあることをご存じでしょうか。今月号の税理士メッセージでは企業版のふるさと納税と呼ばれる制度についてご紹介させて頂きたいと思います。
 
①  企業版ふるさと納税の概要
 企業版ふるさと納税とは、正式名称を【地方創生応援税制】といい、国が認めた地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して寄附をすると、寄附した金額が法人税額から控除をしてもらえるという制度です。令和2年の税制改正で税額控除割合が6割から9割に拡大され適用期間も5年間延長(令和6年度まで)されました。
 
②  メリット
1. 寄付よる税額軽減の効果が最大9割
 通常自治体に寄附をすると寄附金の約3割の法人税等が軽減されますが、企業版ふるさと納税による寄附の場合には、通常の3割に加え法人税等が最大で約6割控除されるため合計で約9割の税額軽減の効果を受けることが出来ます。
2. 社会貢献ができ、企業のPR効果がある
 SDGsの達成などの社会貢献ができ、公式HPにその企業名とその企業が取り組むSDGs活動が紹介されるため、企業のイメージアップに繋がります。
3. 地方自治体との関係性の構築
 地方自治体との仕事上での繋がりは、従来発注者と受注者としての関係性でしたが企業版ふるさと納税では、ともに地方創生のための事業を作り上げるという、より強固な信頼関係を築くことが出来ます。
 
③  デメリット
1. 地元への寄附は不可
 自治体側が許認可や入札などで特定の企業を優遇することがないように、企業の本店所在地の地方公共団体への寄附は対象外となっています。
2. 一定額以下の寄附は対象外
 企業版ふるさと納税では1回当たり10万円以上の寄附が条件となっています。
 
④  まとめ
 企業版ふるさと納税は、税額控除といったメリットだけでなく地方創生や町おこしに役立ちます。町おこし等に興味はあるが具体的な施策などはどうしたら良いかわからない、という方にお勧めだと思います。是非ご検討をしてみてはいかがでしょうか。
      

2023年3月号

交際費と会議費について

 
 新型コロナウィルスの流行から約3年超が経過し、年末年始についても数年ぶりに行動制限は設けられませんでした。当初のコロナ対策も緩和されてきたのでこれからのシーズンと年度末にかけて交際費の支出が増加する時期ではないでしょうか。
 交際費は税務調査においても重点的に調査される項目の一つであり、会計処理についても注意が必要です。そこで今月は交際費と会議費についてポイントを整理して見ていきたいと思います。
 交際費とは税法上次の様に規定されています。
 
 交際費、接待費、機密費、その他の費用で、法人がその得意先、仕入先、その他事業に関係ある者に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。
 
 簡単に言うと、業務を円滑に行うために取引先に対してかかった費用の事です。具体的には取引先との飲食、旅行、観劇等を通じてのおもてなしです。更に、お中元、お歳暮、慶弔、禍福の費用等が該当します。
 本来交際費というのは、冗費を節約して自己資本を充実させ企業の体質を良くしましょう、という観点から本来経費として認められていません。
 しかし中小企業等には特例で年間の限度額を設け、その範囲内で計上を認めているのです。書面の関係上詳細は省きますが、期末の資本金額が1億円以下の法人については以下の様になっております。
 
 損金算入限度額  A・B有利な金額
  A 交際費の内、接待飲食費の額×50%相当額以下までの金額
  B 年間800万円以下の金額
 
 次に会議費とは、社内外の会議や打ち合わせの際に必要となる費用の事です。基本的には会議に関連する費用として、会議で配布する資料代、お茶菓子代、昼食代などは会議費として計上できます。接待飲食代の取扱いについては通常交際費で処理されますが、1人あたり5,000円以下の飲食代(社内飲食費を除く)については交際費に含めずに会議費として処理することが出来ます。会議費については年間の限度額というものは設けられておりませんので、交際費から会議費に計上することにより飲食代が多い法人については節税効果がでてきます。
 また限度額の範囲内だからといって必ずしも全て経費として認められるわけではありません。業務上必要だったものかどうかが問われますので誰と打合せをした等、領収書の裏にメモしておくことをお勧めします。
 

2023年2月号

消費税の改正について No.1

 
 令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まります。インボイスの発行事業者になるためには令和5年3月31日までにインボイス発行事業者の登録番号を取得する必要があります。
 インボイス制度を解説するには消費税の仕組みを理解していないとわかりづらいと思います。紙面の都合上、橋本が消費税の基本的な仕組みを、小林税理士からインボイス制度についてお伝えしたいと思います。
 
1.どんな時に消費税がかかるか
 消費税は、①日本国内で②事業者(法人・個人事業者)が③事業として代金の授受を伴う④商品や資産の売買・貸し借り、サービスの提供(バス・タクシー・宅急便代など)を行った場合は課税されます(飲食料品は軽減税率あり)。
 
2.消費税がかからないもの
 ①上記1の条件(①~④)のうち何か一つでも欠けると消費税はかかりません。例えば事業者ではない個人と個人の間で行う物の売買や貸し借り、保険金や寄附金・配当金といった代金の授受に該当しないもの(一方的にもらう金銭やタダであげるお金)には消費税はかかりません。
 ②上記1の条件を全て満たしていても社会政策的配慮等から消費税を課税しないものを非課税取引と言います。非課税は15種類あり、主なものに土地の売買・居住用住宅の家賃・一定の身体障害者用物品の売買や貸し借りなどがあります。
 
3.消費税の負担者と納税義務者
 ①負担者・・・買い物などをする我々一般の最終消費者
 ②納税義務者・・・上記1の条件に該当する事業者(法人・個人事業主)のうち前々期(個人事業 主は前々年)の課税売上が1,000万円超の場合
 
4.納付税額の計算方法は次の①か②のいずれか(②は小規模事業者用の特例計算)
 ①原則計算・・・ 売上にくっついてきた消費税(例:税込売上11万円のうちの1万円)から仕入れや経費の支払いとともに払った消費税(例:税込買物6万6千円のうちの6千円)を差し引いた4千円(1万円-6千円=4千円)を納付します(この仕入れなどで払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といい小林税理士のメッセージにも出てくる重要な用語です)。
 ②簡易課税・・・ 業種を次の6つ(卸売業・小売業・製造業・その他・サービス業・不動産業)に分け、売上にくっついてきた消費税に先の6つの業種ごとに一定割合を掛け算した金額を納付します(仕入れや経費で払った消費税の集計作業は一切無視して簡便的な計算方法で納税額を計算します)。
 
以上が消費税の基本的な考え方です。本来の消費税法はもっと複雑で難解な部分がありますので不明点はMBCの担当者や税理士にお問い合わせください。
>>消費税の改正について No.2へ

2023年1月号

事業承継について 

 皆様、新年明けましておめでとうございます。
 この度MBC合同会計でも事業承継が行われ、白井・中山両税理士から小林と橋本がMBCのタスキを受け取りました。新代表となり最初の税理士メッセージをお届けすることになりました。今後とも引き続き宜しくお願い申し上げます。
 
 そこで今回は、事業承継の基本的な部分についてお伝えしようと思います。事業承継についてはどの企業でもいつかは必ず訪れる問題であり、準備に早すぎるという事はないと思います。
 
 参考までに日本商工会議所が調査した「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」の調査結果によると、既に後継者を決めている、あるいは後継者候補はいる、と答えた企業が全体の74.4%でした。(2020年時点)
 全体の約3/4の企業で後継者選びについては目途がついていると答えた一方で、残りの1/4は、後継者は決めていないが事業継続したい、あるいは自分の代で廃業する予定、と答えています。黒字の企業でも後継者が見つからずに廃業するケースもあり寂しく感じます。
 
 会社を次の後継者へ引き継ぐ方法としては大きく3つのパターンがありますがそれぞれのメリットとデメリットを挙げてみたいと思います。
 
①族への引継ぎ
 後継者の教育期間を確保しやすく社内外への関係者から受け入れやすいとするメリットがある一方、後継者としての適格性判断が甘くなったり複数の候補者がいる場合には経営権を争うリスクが生じるデメリットがあります。     
②従業員への引継ぎ
 後継者の選択の幅が広がり承継後も業務が円滑に進みやすいとするメリットがあり、デメリットとして自社株の取得のために多額の資金が必要となる場合があること、また親族が従業員承継に反対する場合も考えられます。
③外部人材への引継ぎ
 経営者としての実力を備えた人材を選ぶことができ、その人物は社内にしがらみのな いケースが多いため大胆な改革に取り組めるというメリットがあります。デメリットは金融機関との調整など、引継に手間を要します。
 
 事業承継を行う場合、事業承継をサポートする税制等の優遇措置が関係してきますので早い段階での準備をお勧めいたします。
      
      https://www.jcci.or.jp/20210305kekka.pdf

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